みなさん、こんにちは。
この20年くらい、IT技術者にとってのロールモデルや将来の目標といえば、間違いなく「CTO(最高技術責任者)」だったと言っても過言ではありませんよね。
展示会や勉強会に行けば、最新技術のトレンドはもちろん、技術的負債の解消や技術選定の熱い議論が飛び交っています。CTOは常に、そうした技術の最前線で旗を振る「技術の象徴」として語られてきました。
しかし、AIの登場によって、CTOという役職はこれまで以上に多様化し、そしてこれまで以上に「結局、何をする人なの?」という誤解を生みやすい立場になっています。
- 「CTOは単なる技術のトップなのか?」
- 「経営にどこまで深く関わるべきなのか?」
- 「AIがコードを書く時代、CTOの仕事はなくなるのか?」
こうした問いが、今まさに多くの現場で噴出しています。
今回は、AI時代におけるCTOの役割を「技術全振り型」と「文脈接続型」という二つの世界線から整理して、これからのCTO像を考えてみたいと思います。
これまでの CTO – 技術の「深さ」が正義だった時代
これまで、CTOといえば「社内で最もコードが書ける人」「誰よりも技術に精通している人」が就く役職でした。
- 圧倒的な実装力
- 深いアーキテクチャへの理解
- 職人芸のようなパフォーマンスチューニング
- 技術的負債を見逃さない管理能力
こうした「技術の深さ」そのものが、CTOの価値であり、存在証明だったのです。技術の純度を守り、「技術的に正しいこと」を追求することで組織を支える。そんな職人気質なリーダー像が一般的でした。
AI の登場で揺らぎ始めた「深さ」の独占
ところが、AIコーディングが当たり前になり、自然言語(プロンプト)でアプリが作れるようになった現在、状況が一変しました。
- コードの自動生成
- リファクタリングの提案
- テストコードの作成
- アーキテクチャ案の高速提示
これらはまさにAIが得意とする領域です。かつてCTOが時間をかけて行っていた判断の一部を、AIが瞬時に肩代わりし始めました。もちろん、深い技術理解は今も不可欠ですが、「深さだけで勝負できる時代」は終わりを迎えつつあります。
新たな主役 – 文脈接続型 CTO の台頭
AIが「どう作るか(How)」を担うようになると、相対的に価値が上がるのが「文脈接続型」のCTOです。
このタイプは、技術そのものよりも、以下のような「技術の意味づけ」に強みを持ちます。
- この技術を、どう事業の勝ち筋に繋げるか?
- AIをどう組織の文化に浸透させるか?
- 複雑な技術を、どうやって社会や顧客に「価値」として翻訳するか?
「文脈」「意味」「価値」「組織」「戦略」「人間の意思決定」。
これらはAIが最も不得意とする領域であり、人間にしかできない聖域と言えます。
二つの世界線、あなたはどちらを選ぶ?
ではAI時代においては「技術全振り型」のCTOの存在意義はなくなったのかというと、そんなことはありません。むしろ、役割が明確に分岐していくのだと思います。
具体的に、どのような場面でそれぞれの価値が発揮されるのか、対比表にまとめてみました。
| シーン | 技術全振り型 CTO の価値 | 文脈接続型 CTO の価値 |
| AIが書いたコードが不安 | 深い理解でバグやリスクを特定し、修正する | その修正が事業に与える影響を見て、優先順位を決める |
| 新規プロダクトの立ち上げ | 堅牢で拡張性の高いアーキテクチャを設計する | どの市場で、どの顧客課題を解くために作るかを決める |
| AIを導入したい! | どのモデルが最適で、どう統合するかを判断する | AI導入が組織や業務フローにどう影響するかを設計する |
| 技術負債が溜まっている | 技術的に「どこが腐っているか」を見抜く | 「どこに投資し、どこを捨てるか」を意思決定する |
| エンジニア組織の混乱 | 技術基準やレビュー文化を整える | 組織構造、評価制度、役割分担を再定義する |
どちらも必要ですが、価値が生まれる「場所」が全く違うことがわかりますよね。ただし、絶対数で考えると、文脈接続型CTOが求められるケースが多くなっていくだろうことは予想できます。
AI 時代の CTO の本質とは
結局、これからのCTOに求められるのは、「AIを前提に、技術をどう扱うかを決められる力」です。
AIをどこまで使い、どこから人間が判断するのか。どの技術に賭け、何を捨てるのか。これらを決めるには、技術の深さだけでは足りません。かといって、ビジネスの文脈だけでも不十分です。
技術と文脈の「境界線」に立ち、双方を橋渡しできる人こそが、AI時代に最も必要とされるCTOなのではないでしょうか。
自分の軌道は自分で選ぼう
AI時代は、役割を奪うのではなく、役割を「分岐」させます。
- 技術を極める道
- 技術を使って価値を生む道
どちらの世界線もエキサイティングで、未来があります。大切なのは、周りと比較するのではなく、自分がどちらの軌道で生きていきたいのかを理解し、選び続けることです。
その分岐点に立っている今、自分がどうしたいのか「技術者としての未来」が問われています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい技術者ライフを!



