qemu-imgでVDI/VMDKをVHDXに高速変換!Hyper-V移行をWindowsで完結させる方法

みなさん、こんにちは。

近年、仮想化環境の選択肢は増え、VirtualBoxVMwareからHyper-Vへ移行したいというニーズも高まっています。特にWindows ServerWindows 10/11 Proに標準搭載されているHyper-Vは、手軽さと高いパフォーマンスから、開発や検証環境として非常に人気です。

2025年10月3日、マイクロソフトからWindows Admin Centerを使用したVMwareからHyper-Vへの仮想マシン移行ツールが発表されました。これは企業インフラ管理者にとっては朗報ですが、個人開発者や小規模な環境においては、ツールの導入や利用が少し大掛かりに感じられるかもしれませんね。

そこで今回は、より手軽で、かつゼロコストで実現できるオープンソースのディスク変換ツール「qemu-img」を活用し、VirtualBoxのVDIやVMwareのVMDKファイルをHyper-Vで利用可能なVHDX形式に変換し、無事に起動させるまでの具体的な手順を解説します。

仮想ディスク形式利用プラットフォーム例特徴
VDI (Virtual Disk Image)VirtualBoxシンプルで扱いやすい
VMDK (Virtual Machine Disk)VMware製品非常に普及しており高機能
VHDX (Virtual Hard Disk v2)Hyper-V大容量・堅牢性が特徴

qemu-imgは、これらの主要な仮想ディスク形式を相互に変換できるクロスプラットフォームなツールです。これにより、OSの再インストールや面倒な環境構築を避け、既存の仮想マシン環境をそのまま再現できます。

以前もHyper-VのVHDXをVirtualBoxのVDIに変換したり、VirtualBoxのVDIをVMwareのVMDKに変換する方法を紹介しましたが、今回はその続編となります。

 


 

qemu-imgの導入 – Windows環境でのセットアップ

 

qemu-imgは、仮想化ソフトウェアQEMUに同梱されるユーティリティの一つです。Windows環境でも簡単に導入できます。

公式インストーラを利用した手順

  1. QEMU公式サイトへアクセス
    • QEMUの公式サイトにアクセスし、「Download」セクションから「Windows」の項目をクリックします。
  2. バイナリのダウンロード
    • ご自身の環境に合わせて「64-bit」を選択し、ダウンロードサーバーから実行ファイル(例: qemu-w64-setup-<version>.exe)をダウンロードします。
  3. インストールとPath設定
    • ダウンロードしたインストーラを実行し、インストールを完了させます。既定では C:\Program Files\qemu にインストールされます。
    • コマンドプロンプトのどこからでも実行できるように、インストール後、必ず環境変数 Path に C:\Program Files\qemu を追加してください。
      • [スタート] → [環境変数の編集] → [Path] → [編集] → [新規] → パスを入力

 

パッケージマネージャScoopを利用した手順(推奨)

WindowsのパッケージマネージャScoopを利用すると、Path設定が自動で行われるため、よりスムーズに導入できます。

scoop install qemu

 

動作確認

インストール後、コマンドプロンプトまたはPowerShellを開き、以下のコマンドを実行します。ヘルプが表示されれば、セットアップは完了です。

qemu-img --help

 


 

仮想ディスクの変換手順 – VDI/VMDKをVHDXへ

 

qemu-imgを使った変換は、非常にシンプルです。コマンドライン一つで大容量のディスクイメージの形式を変換できます。

基本構文

変換は、convert オプションを使用します。ここで重要なのは、-f-O オプションです。

qemu-img convert -f <入力形式> -O <出力形式> <入力ファイル名> <出力ファイル名>
オプション意味主な指定形式
-fFormat (入力形式)vdi, vmdk, vhdx など
-OOutput format (出力形式)vhdx, vdi, vmdk など
-pProgress (進捗表示)変換中に進捗率を表示 (推奨)

 

変換コマンド例

例1:VirtualBox VDI → Hyper-V VHDX への変換
qemu-img convert -p -f vdi -O vhdx C:\VM\disk.vdi C:\VM\disk.vhdx
例2:VMware VMDK → Hyper-V VHDX への変換
qemu-img convert -p -f vmdk -O vhdx C:\VM\disk.vmdk C:\VM\disk.vhdx

仮想ディスク名はお使いの環境にあわせてください。

変換中は、-pオプションを指定することで進捗状況がパーセンテージで表示されるため、進捗が分かりやすく安心です。なお、変換中は、入力ファイルサイズの数倍の空き容量が一時的に必要になる場合があるため、同一ドライブ内に十分な空きがあることを事前に確認しましょう。

 


 

Hyper-Vへのインポートと起動

 

変換が完了したら、生成されたVHDXファイルをHyper-Vマネージャーに登録し、仮想マシンとして起動します。

  1. Hyper-Vマネージャーの起動Windowsの検索ボックスから「Hyper-V マネージャー」を起動します。
  2. 新しい仮想マシンの作成右側の操作パネルから「新しい仮想マシン」を選択し、ウィザードを開始します。
  3. 世代の選択
    • 第2世代
      • Windows 10以降、Linuxの最新版など、UEFIブートに対応したモダンなOSの場合は、セキュアブートや高速起動が可能な第2世代を選択します。
    • 第1世代
      • 古いOS(Windows 7など)やUEFI非対応OSの場合は第1世代を選択します。
  4. 仮想ハードディスクの指定
    • 「仮想ハードディスクの接続」の項目で、「既存の仮想ハードディスクを使用する」を選択し、qemu-imgで変換した disk.vhdx ファイルを指定します。
  5. 起動
    • 仮想マシンの作成後、起動します。多くの場合、初回起動時にHyper-V環境に合わせたデバイスドライバの再構成(Plug and Play)がOS内部で行われます。

 


 

トラブルシューティングと互換性に関する注意点

 

変換とインポートは成功しても、異なる仮想化プラットフォーム間でOSを起動する際には、いくつかの相性問題が発生することがあります。

ブートとドライバの不一致

問題点詳細と対処法
UEFI/BIOSの不一致VirtualBox側でUEFIブート設定をしていた場合、Hyper-V側でも必ず第2世代VMで起動してください。
ディスクコントローラ仮想ディスクのコントローラ(IDE/SCSIなど)の違いによりOSがディスクを認識できないことがあります。Hyper-Vの第2世代VMではSCSIディスクが標準です。
OSが起動しない起動エラーが発生する場合、OS内部のブート設定が移行前の環境を参照している可能性があります。OSのインストールメディアなどを使って、修復インストールまたはブートローダーの修復を試みてください。

ネットワークアダプタの再設定は必須

最も遭遇しやすいトラブルの一つがネットワークの問題です。VirtualBoxやVMwareとHyper-Vでは、仮想ネットワークアダプタの種類や名称が異なるため、OS内部で再構成が必要になります。

特にLinux(Ubuntuなど)の場合、ネットワーク設定ファイル内のアダプタ名が移行前のもの(例: enp0s3など)のまま残ってしまい、Hyper-V環境で認識されないことがあります。

  • 私の場合、Ubuntu22.04をVirtualBoxからHyper-Vへ移行する際に以下の対応を行いました。
    • 以下の設定ファイルを確認し、アダプタ名をenp0s3からeth0へ修正
      • /etc/netplan/50-cloud-init.yaml
      • /etc/cloud/cloud.cfg.d/90-installer-network.cfg

 

特定OSの非互換性

qemu-imgがディスク形式を変換できても、OS自体の仮想化プラットフォームへの依存度が高い場合、Hyper-Vで正常に動作しないことがあります。例えば、ニッチなOSや、特定のハードウェアに強く依存するドライバを持つOSは、起動しない可能性があります。

私の場合はHaikuOSが起動しませんでした。これはディスク変換の問題ではなく、プラットフォームの相性問題として認識しておく必要があります。

 


 

まとめ

 

qemu-imgは、個人開発者や検証環境にとって、VirtualBoxやVMwareで作成したVDI/VMDK資産をHyper-VVHDX形式に自由かつゼロコストで移行できる非常に強力なツールです。

変換元変換先コマンド例
VDIVHDXqemu-img convert -f vdi -O vhdx disk.vdi disk.vhdx
VMDKVHDXqemu-img convert -f vmdk -O vhdx disk.vmdk disk.vhdx

ディスク形式の変換はqemu-img一つで完結するため、仮想マシンの再構築という大きな手間を避けて、既存の環境を迅速に再利用できます。ディスク変換後のネットワーク設定やOSのブート設定の調整が必要になるケースはありますが、既存環境の資産を最大限に活用できるというメリットは計り知れません。

今回はHyper-VのVHDXへの変換手順を解説しましたが、それだけではありません。実はqemu-imgを使えば、Hyper-VからVirtualBoxやVMwareへ、あるいはVMwareからVirtualBoxへといった相互変換も可能です。これにより、仮想化プラットフォームの選択肢が格段に広がります。

ぜひ、この手順を活用してください!

 

ビューローみかみではIoTのシステム企画から開発、機器の選定までをお手伝いしています。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、よい仮想マシンライフを!

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