みなさん、こんにちは。
私は趣味でRC(ラジオコントロール)を楽しんでいます。少年時代にバギーブームを経験し、一度は離れたものの、コロナ禍をきっかけにこの世界へ戻ってきました。現在はシミュレーターや小型RCカーを中心に、その奥深さを再確認する日々を過ごしています。
しかし、再びこの趣味に向き合う中で、ある「問い」が頭を離れなくなりました。
「今のRCビジネスは、レジェンドを中心に回っていないのではないか?」
そして、そこからひとつの踏み込んだ仮説にたどり着きました。
「レジェンドを中心に据えない市場は、必ずコモディティ化(同質化)する」
今日は、RC界の現状を例に、このビジネス構造の本質について考えてみたいと思います。
人が惹かれるのは、製品ではなく「思想」である
RCの世界において「レジェンド」といえば、多くの方が広坂正美氏の名を挙げるでしょう。 彼の価値は、単なる勝利数や記録にあるのではありません。
- セットアップに対する独自の思想
- マシンに対する深い哲学
- レース展開を読む力
- 誰もが再現可能な技術の理論化
これらはいわば「技術の体系」です。 ファンが感動するのは、単に「速いマシン」そのものではありません。そのマシンを操る背後にある「思想」に惹かれるのです。
私も広坂氏の著作「ラジコン街道」を読んで感動した一人です。
本来、スポーツビジネスが成立するのは、トップアスリートという「物語の中心」が存在するからです。では、現在のRC業界はどうでしょうか。
合理的な「RCビジネス」と、そこに潜む乖離
現在の市場構造は、経営の観点から見れば非常に合理的に構成されています。
- 定期的な新製品の投入
- オプションパーツによる拡張需要の喚起
- 消耗品の継続販売
- メーカー主催のカテゴリー戦による囲い込み
タミヤや京商といった主要メーカーが、自社製品を軸に競技設計を行うのは、企業として極めて正しい判断です。しかし、ここには構造的な欠落が潜んでいます。
競技と製品の「乖離」というシグナル
現在、トップカテゴリーの競技車両は、私たちが手にする市販モデルとは大きくかけ離れた存在になっています。
剛性の最適化、厳格なパーツ選別、緻密な細部加工。それはもはや、量産キットの延長線上にはありません。
その結果、少しRCカーの世界に触れただけのユーザーは「あれは別世界の出来事だ」と感じてしまい、「憧れ」が「購買意欲」に変換されにくくなっているのです。
すでに始まっている「思想」への挑戦
もちろん、この状況に一石を投じようとする動きはすでに始まっています。
例えばジーフォース(G-FORCE)社は、広坂氏と共にその「思想」を前面に打ち出す試みをスタートさせています。
- 技術の言語化と理論の体系化
- 製品に「思想」を紐付ける試み
これは市場の未来を見据えた、極めて正しい方向性だと言えます。
しかし、一つの企業が思想を提示できても、市場全体の「設計図」を書き換えるには、まだ壁があるのが現状です。シャーシプラットフォームを握る中核企業がどう動くかが、今後の鍵となります。
なぜ「レジェンド」不在の市場は、同質化するのか
ここで、本質的なメカニズムに触れたいと思います。
レジェンドを中心に据えない市場が、なぜコモディティ化(同質化)を避けられないのか。それは、差別化の源泉が「製品スペック」だけになってしまうからです。
製品スペックは、時間の経過とともに必ず横並びになります。
- 素材は共通化され
- 設計思想は模倣され
- 技術革新は均質化していく
その先に待っているのは、価格競争や小手先の差別化です。現在の市場を牽引している「復刻版」市場も小手先の差別化に過ぎません。これは典型的なコモディティ市場の姿です。
一方で、レジェンドが持つ「思想」や「物語」は、決して模倣できません。レジェンドが中心にある市場は、スペックではなく「物語」で差別化されます。そこにこそ、真のブランドが生まれるのです。
中心企業が担うべき役割
この構造を再設計できるのは、市場のプラットフォームを握る中心的な企業です。ユーザーの母数を持ち、カテゴリーの設計権を持つ企業が取り組むべきことは明確です。
- レジェンドの思想を主力ラインアップに反映させる
- 「セットアップ理論」そのものを価値として売る
- 改造の自由度ではなく「理論の理解度」を競うカテゴリーの創設
これが実現できれば、市場は単なる「消費」の場から、再び「憧れ」を中心とした文化へとシフトしていくはずです。
RC文化の分岐点
今のRC市場は、製品中心のサイクルで回っています。しかし、文化を支え、次世代へ繋ぐのは常に「人」です。
レジェンドを単なる広告塔として利用するのではなく、市場設計の中核に据えること。それを怠れば、市場は均質化の末に価格競争へと向かってしまいます。
ジーフォース社のような先駆者が思想を提示し始めている今、それを業界全体がどう受け止め、どう構造に組み込んでいくか。
RCという文化が、単なるプロダクトサイクルで終わるのか、それとも「憧れ」を中心に再設計されるのか。
RC市場は、今、大きな分岐点に立っているのではないでしょうか。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいRCライフ!



