みなさん、こんにちは。
年度末を迎え、営業担当者の動きがせわしなく感じる季節となりました。
当サイトの読者は営業というより技術者の方が多いと思います。
みなさんは日々の開発業務の中で、「営業」という職種をどう見ていますか?
「スペックを無視して仕事を取ってくる人」あるいは「外で会食をしている人」……
そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし先日、多摩美術大学(多摩デザインユニバーシティ)の講義動画「今、なぜアナログゲームか」を視聴し、アナログゲーム研究家・草場純氏の言葉に触れたとき、「営業」という仕事を技術者視点で説明できる理論では、と直観しました。
今日は、技術者にこそ知ってほしい、「ルール設計としての営業」という視点をお話しします。
営業は「ゲーム」である
草場氏は、ゲームをこう定義しています。
「ゲームとは、『ルール』と『闘争性』のある遊びである」
この定義をビジネスに当てはめてみると、営業という仕事の本質が見えてきます。
営業とは、商慣行という「ルール」の上で、自社の価値を提示し、対価を得る約束を取り付ける行為です。そこには、競合他社との「闘争」があり、時には社内調整という別の「闘争」も存在します。
つまり、営業の本質は、きわめてゲーム的な構造を持っているのです。
将棋ではなく「ポーカー」に近い
ただし、営業は将棋や囲碁のような「完全情報ゲーム」ではありません。相手の手の内がすべて見えているわけではない、「不完全情報ゲーム」です。
- 顧客の本当の予算(本音)は見えない。
- 本当の決裁者が誰か、最初は分からない。
- 競合が裏でどんな条件を提示しているかも不明だ。
互いに情報を完全には開示せず、限られた情報から最適解を推測して動く。この構造は、将棋よりもポーカーに近いと言えるでしょう。手持ちのカード(技術力や実績)をどう扱うか。どこで勝負(クロージング)に出るか。営業とは、見えない変数を読み解きながら進める高度な情報戦なのです。
「価値 × 価格」の二次元を超えて
多くの新人営業は、製品を「価値」と「価格」という二つの軸だけで売ろうとします。「スペックが高いから」「安いから」という論理です。
しかし、BtoBの複雑なビジネス現場では、この二軸だけでは早々に消耗戦(レッドオーシャン)に陥ります。ここで、エンジニアリングにおける「多次元最適化」のような発想が必要になります。
熟練した営業は、ゲームのルールを書き換え、評価軸を増やします。
- 信頼関係の深さ(メンテナンスの安心感)
- リスク対応力(トラブル時の即応体制)
- 将来の拡張性(将来のシステム連携のしやすさ)
- 共創の可能性(共に新しいビジネスを作るパートナーシップ)
これら新しい「軸」を持ち込むことで、スペックや価格でわずかに劣っていても、勝利の方程式を書き換えてしまいます。これは単なる販売ではなく、「勝てる空間(ルール)の設計」です。
顧客の「勝利条件」をデバッグする
さらに重要なのは、「顧客側のゲーム」を理解することです。 顧客もまた、組織というゲームの中で自分の勝利条件(KPI)を持って動いています。
営業が価格交渉だと思っていたものが、実は顧客担当者の「上司に対する説明可能性(メンツ)」の問題だった、ということはよくあります。あるいは、機能比較だと思っていたものが、実は「失敗した時の責任回避」の構造だったりもします。
顧客が解決したい真の「バグ(ペインポイント)」は何なのか。
その勝利条件を特定した瞬間、営業の打ち手は「物売り」から「構造の設計」へと進化するのです。
営業とは「関係性の設計」である
こうして考えると、営業とは単に物を売る行為ではないとわかります。顧客と製品、そして市場の関係性を設計する行為なのです。
- どのルールの上で戦うのか。
- どの軸を評価対象として持ち込むのか。
- 顧客が社内で勝つために、何を提供すればいいのか。
もし、自社のプロダクトが競合に比べて完璧ではないと感じても、絶望する必要はありません。同じ尺度で戦い続ける必要はないのです。
軸を変え、空間を広げ、ルールを再定義する。それこそが営業のクリエイティビティです。
開発と営業でルールを共創するゲーム
ゲームは通常、与えられたルールの中で戦うものです。
しかし、営業というゲームの面白いところは、「ルールそのものを設計できる」点にあります。
エンジニアがコードでシステムを構築するように、営業はロジックと関係性でビジネスの構造を構築しています。
みなさんの隣にいる営業担当者は、今、どんなルールの上でゲームを設計しているでしょうか?
その意図を理解したとき、開発と営業の連携は、より強固な「共創」へと変わっていけるはずです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい営業活動(と開発活動)を!
今回の参照動画
今、なぜアナログゲームか | 草場純 (多摩デザインユニバーシティ)



