技術者がビジネス視点を持つ理由 – 医療・介護スタートアップの資金調達ステージから学ぶ

みなさん、こんにちは。

当サイトの読者はエンジニアや技術者のみなさんが多いと思います。おそらく、日々、開発業務に集中されているのではないでしょうか。

エンジニアや技術者にとって、コードを書く力はもちろん重要です。しかし、それだけでは正しい職場で正しい価値を発揮できません。ビジネスの成長ステージを理解することが、キャリアを大きく左右するからです。

たとえばスタートアップの世界では『シード』『シリーズA』『シリーズB』といった資金調達の段階が存在します。これらは単なる投資用語ではなく、技術者がどのように関わり、どんな役割を果たすべきかを示す「キャリアの地図」でもあるのです。

今回は、社会貢献度の高い医療・介護分野のスタートアップの実例を交えながら、各資金調達ステージの特徴と、技術者がどのように関わり、キャリアを構築していくべきかを解説します。

 


 

スタートアップの資金調達ステージと技術者の役割

 

スタートアップの成長は、資金調達のステージによって明確に区切られます。技術者にとって、どのステージにいるかで求められるスキルセットや役割が劇的に変わるため、この「地図」を理解することが不可欠です。

1. シード(Seed)ステージ 【ゼロイチを形にする創造期】

項目特徴・目安技術者の役割と求められるスキル
調達額目安数百万円〜数千万円「ゼロイチ」の開発スピード
期間6〜12ヶ月MVP(Minimum Viable Product)の構築
目的アイデア検証、MVP開発、初期ユーザー獲得フルスタック志向、少人数での基盤構築

キャリア戦略の視点
新しいものを作るのが好き、事業の立ち上げに深く関わりたい技術者にとっては、最もエキサイティングなステージです。ここで構築した技術基盤が、将来の会社の命運を分けます。共同創業者・CTO候補として技術基盤を担うチャンス。

2. シリーズA 【プロダクトと市場適合性を証明する成長期】

項目特徴・目安技術者の役割と求められるスキル
調達額目安数億円〜十数億円重要業績評価指標(KPI)達成に直結する開発の優先
期間12〜18ヶ月スケーラブルなシステム設計の開始
目的プロダクトを市場投入、重要業績評価指標(KPI)を設定・達成チーム開発体制の立ち上げ、開発リーダー

この段階では、導入施設数や離職率改善などのKPIを達成するための機能開発が最優先になります。

キャリア戦略の視点
開発のリーダーシップが求められます。技術的な課題解決能力に加え、ビジネスサイドの要求を理解し、開発ロードマップに落とし込むスキルが重要です。

3. シリーズB 【事業を拡大し、市場シェアを奪取する拡大期】

項目特徴・目安技術者の役割と求められるスキル
調達額目安十数億円〜数十億円(日本)大規模ユーザーを支えるインフラ整備
期間18〜24ヶ月SRE・DevOpsの導入、技術負債の解消
目的事業規模の拡大、市場シェア獲得、海外展開の検討CTO・VPoEとして「組織づくり」「採用」に深く関与

キャリア戦略の視点
純粋な実装能力に加え、「組織をスケールさせる力」が最も重要になります。VPoE (Vice President of Engineering)として、採用、育成、開発プロセスの標準化に責任を持ちます。

4. シリーズC以降 【上場・M&Aを見据える成熟期】

項目特徴・目安技術者の役割と求められるスキル
調達額目安数十億円〜100億円超(日本)セキュリティ・コンプライアンス対応
期間24〜36ヶ月業務効率化、自動化、ガバナンス体制の構築
目的利益率の確保、IPO(上場)やM&Aを視野に経営層と並走し、IPO準備に関与

キャリア戦略の視点
技術は「攻め」だけでなく「守り」の役割も増します。特に医療・介護分野では、個人情報保護(Pマーク、ISMSなど)や薬機法などへの対応が必須となり、技術ガバナンスの責任者としての役割が求められます。


 

技術者が選ぶべき2つのキャリア戦略

 

資金調達ステージの理解は、自分の今後のキャリアを設計するための戦略マップになります。大きく分けて、技術者は以下の2つのキャリア戦略を選ぶことができます。

1. 渡り歩き型 【スキルと好みに合わせてステージを選ぶ】

自身の得意な開発スタイルや成長したいスキルに合ったステージを選び、複数のスタートアップを経験する戦略です。

  • 「ゼロイチ」が得意な人
    • シード期を渡り歩き、新しいプロダクトの立ち上げに特化。
  • 「スケール」が得意な人
    • シリーズA・B期を選び、チーム開発の効率化や大規模インフラ構築に貢献。

自分の技術をとことんまで極めたい人、ビジネスの意思決定よりもコードやアーキテクチャ設計に集中したい技術志向の強いスペシャリストはこちらの道を選びましょう。

2. 併走型(マネジメント志向) 【事業と共に成長し、CTOを目指す】

一つの事業に深くコミットし、資金調達ステージの進行と共に自身の役割も変えながら成長していく戦略です。

ステージ主な役割
シード期実装者(手を動かすエンジニア)
シリーズA開発チームリーダー
シリーズBVPoE/CTO候補(組織・採用に責任を持つ)
シリーズC以降経営層(IPO準備、技術ガバナンス責任者)

こちらの戦略は、事業への深い理解と、ステージごとに求められる技術・マネジメント・ビジネススキルを複合的に身につけることとなります。

日本のイノベーションをリードする経営者になりたいなら、迷わずこちらの道を選びましょう。

 


 

まとめ – 資金調達ステージはキャリアの地図

 

スタートアップの資金調達ステージは、単なるビジネス用語ではなく、技術者のキャリア選択と成長の地図です。

特に医療・介護スタートアップは、社会課題の解決事業性の両立が求められるため、技術者の貢献度と責任は非常に大きいのが特徴です。

  • 自分の開発スタイルを活かしたいなら:渡り歩き型
  • CTO・経営層を目指したいなら:併走型

自分が目指すキャリアはどちらですか?資金調達ステージを理解し、そのフェーズで求められる役割を意識して日々の業務に取り組みましょう。そうすれば、きっと自分の市場価値が飛躍的に高まるはずです。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、よいスタートアップライフを!

 

ビューローみかみは、特にシードステージの企画・開発(MVP開発、プロトタイピング)を得意としています。

もし、この「ゼロイチ」のステージで一緒に新しい価値を創造したいと思ってくださるエンジニアの方、または事業共創をご検討の企業様がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にお声がけください。

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