新規事業の企画に携わるみなさん、こんにちは。
リーンキャンバスというツールをご存じでしょうか?
新規事業企画担当者には馴染み深いかもしれませんが、システム開発に携わる方には聞き慣れない言葉かもしれません。
今回は、ビジネス経験の浅いスマートフォンアプリ企画担当者が、リーンキャンバスを用いて新規ビジネスを企画・検証する手順と例を解説します。
リーンキャンバスとは
リーンキャンバスは、スタートアップや新規事業の計画を簡潔にまとめるためのフレームワークです。従来のビジネスプランと比較して、よりシンプルで柔軟性があり、迅速な仮説検証が可能となる特徴を持っています。
リーンキャンバスが役立つ場面
リーンキャンバスは、以下の場面で有効です。
- 新規事業のアイデア整理
- 事業アイデアを可視化し、関係者と共有しやすくなります。
- ビジネスモデルの仮説検証
- 市場のニーズや競争環境を分析しながら、仮説を素早く検証できます。
- 投資家やチームへの説明
- 簡潔なフォーマットで事業計画を説明できるため、投資家やチームメンバーへのプレゼンテーションに適しています。
リーンキャンバスの作成手順
リーンキャンバスは、以下の9つの要素で構成されています。
- 課題: ターゲット顧客が抱える問題を特定します。
- 顧客セグメント: 解決すべき課題を持つ具体的な顧客層を定義します。
- 独自の価値提案: 他社にはない、自社のサービスや製品の強みを明確にします。
- ソリューション: 顧客の課題を解決する具体的な方法を示します。
- チャネル: 顧客にサービスや製品を届ける手段を検討します。
- 収益の流れ: ビジネスモデルとして、どのように収益を得るのかを考えます。
- コスト構造: 事業運営に必要な費用を洗い出します。
- 主要指標: 成功の指標となるKPI(重要業績評価指標)を設定します。
- 圧倒的な優位性: 競合が簡単に真似できない要素を明確にします。
リーンキャンバス作成の具体例
ここでは、訪問あはき師(訪問型の鍼灸マッサージ師)向けのスマートフォン用アプリのビジネスアイデアを例に、リーンキャンバスを作成してみます。
課題から順に項目を埋めていきます。後から修正しても構いませんので、思いつくままに埋めていきます。まずは埋められる項目をどんどん埋めていき、その後矛盾点を修正していくとよいと思います。
リーンキャンバスの作成に関して、特定のビジネスアイデアの作成に時間をかけてもよいものができるとは限りません。この時点では特定のビジネスアイデアの精度をあげるよりも、多くの異なるリーンキャンバスを作成して、よりよいビジネスアイデアを選び出す方が賢明です。
例として以下のビジネスアイデアを示します。
課題:
- 訪問型の施術師は新規患者の獲得が難しく、事務作業(予約管理、報告書作成、保険請求対応)の負担が大きい
- 保険制度を利用するためには、かかりつけ医の指示が必要であり、その確認プロセスが煩雑である
顧客セグメント:
- 訪問あはき師(訪問型鍼灸マッサージ師)に特化
- 特に、個人事業主であり、日々の業務効率化と保険請求の手続き負担軽減を求める層
独自の価値提案:
- スマートフォン1台で訪問業務全体(予約管理、施術管理、かかりつけ医指示の確認など)を効率化
- 保険制度適用のためのかかりつけ医の指示確認を簡素なフローで実現し、業務の信頼性と効率性を向上させる
ソリューション:
- MVPとして、基本的な施術管理、患者情報の共有、予約システムを統合したシンプルなアプリを提供
- アプリ内に、保険制度利用のためのかかりつけ医の指示確認機能(チェックリストまたは証明書のアップロード機能)を実装し、規制対応を確実に行う
チャネル:
- 口コミ
- 専門誌広告
- 自社WEBサイト
- SNS(特に訪問あはき師のコミュニティ内での情報拡散を狙う)
収益の流れ:
- 月額3,000円のサブスクリプションモデル
- 初期導入を促進するため、初月無料トライアルや体験版の提供も検討
コスト構造:
- クラウドサーバ(例:AWS利用料)
- 開発・保守費用(初期のMVP開発に集中)
- 営業・サポート体制の確立(小規模ながらも専任のサポート担当)
主要指標:
- アプリのダウンロード数
- 月間アクティブユーザー
- 予約件数
- かかりつけ医の指示確認が完了した利用者の割合
- 保険請求に成功したケース数や、顧客からのフィードバック(改善点など)
圧倒的な優位性:
- 訪問あはき師に特化した唯一の専用アプリとして、市場での独自性を確保
- 法規制に対応したかかりつけ医の指示確認機能を備えており、保険適用のための信頼性を向上させる
実際に作成したリーンキャンバスは以下の通りです。

リーンキャンバス作成後のステップ
リーンキャンバスを作成したら、次に以下のステップを踏むことで、より実践的な事業開発が可能になります。
- 仮説検証の実施
- 設定した課題や価値提案が実際に顧客に求められているかを検証するために、アンケートやインタビューを行います。
- MVP(Minimum Viable Product)の開発
- 必要最小限の機能を持つ試作品を作成し、実際の市場で試してみます。
- ユーザーからのフィードバック収集
- MVPを利用した顧客の反応を収集し、改善点を特定します。
- ピボット(方向転換)またはスケールアップ
- 仮説が間違っていた場合はピボット(方向転換)し、成功しそうな部分にフォーカスします。
検証がうまくいけば、スケールアップ(事業拡大)を検討すればよいでしょう。
まとめ
リーンキャンバスは、ビジネスアイデアを迅速に整理し、仮説検証を行うのに非常に有効なツールです。
また、リーンキャンバス作成後は、実際の市場での検証を行い、必要に応じて事業の方向性を柔軟に修正していくことが成功への鍵となります。
いかがでしたか?
リーンキャンバスを実際に作成してみると、もっと気付きを得られると思いますので、ぜひ実践してみてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。