みなさん、こんにちは。
生成AIの普及によって、これまで専門家だけが担ってきた深い知識へのアクセスが誰にでも開かれるようになりました。しかし、ただ情報を集めるだけではイノベーションは生まれません。
本記事では、生成AI時代に必要なスキルを整理し、なぜ「越境型イノベーター」がこれからのキーパーソンとなるのかを紐解きます。さらに、従来のキャリア観とのギャップを確認しつつ、自分自身が越境型イノベーターになるために、日々どんな心がけを持つべきかについて具体的に考えてみたいと思います。
1. 生成AI後に必要になるスキル
生成AIは情報インフラを劇的に変え、専門知識だけではもはや優位性を担保できない時代をもたらしました。AIを活用すれば、誰もが必要な知見を瞬時に手に入れられます。
まずは、自分のコアな専門領域を磨きながら、他分野への好奇心を行動に移すことが欠かせません。具体的には、業務の合間に別部署を訪ねたり、オンラインセミナーに顔を出したりして、その場で得た示唆をメモに残してみましょう。こうした小さなアクションが、AIから得た断片的な情報を自分の仕事に落とし込む第一歩となります。
次に、AIの出力に対しては常に「本当に根拠はあるか?」「別の視点を加えるとどうなるか?」と問い続けるクリティカルシンキングの実践が必要です。誤情報や偏りを見抜きつつ、不足要素を自ら組み合わせて再構築することで、質の高いアイデアが生まれます。
そして、ユーザーの真のニーズを捉えた小さなプロトタイプを高速でつくり、必ずフィードバックを集めて改良を重ねる──このデザイン思考・システム思考のサイクルを日々実践することが、漠然とした発想を具体的な価値に昇華させる原動力になります。
これらを意識して日々の業務に取り入れるだけで、生成AI時代でも替わりのきかない人材へと成長できるはずです。
2. 「越境型イノベーター」とは何か
本記事で「越境型イノベーター」とは、前節で挙げたスキルを備え、生成AIを駆使してドメインのサイロを横断し、新たな化学反応を起こせる人材を指します。
一方、組織開発領域では「部署や職種の枠を超えて価値を生み出す人材」と定義されることもありますが、本記事ではとりわけ「専門家の知見」と「AIで集約した他分野の知見」を橋渡しし、組織構造の壁を超えたイノベーションを創出する能力にフォーカスしています。
必要に応じて「イノベーション・ブリッジャー」や「知のトランスレーター」と言い換えても構いませんが、いずれも「知と技術をつなぎ、新たな価値を生む存在」という本質は同じです。
3. 今までのキャリア価値観と異なる越境型イノベーター
従来の日本企業では、年功序列や長期在籍、専門特化による昇進が美徳とされ、自らの役割や専門領域を深耕し続けることこそがキャリア構築の王道でした。
しかし生成AI時代においては、単一分野にとどまったままでは新たな発想や視点を生み出しにくくなりつつあります。そのため、越境型イノベーターは、自らジグザグ型のキャリアを意図的にデザインする必要があります。
ジグザグ型キャリアとは、専門領域を深める「縦」の経験と、異なる分野を渡り歩く「横」の経験を交互に繰り返すことで、知識とネットワークの両面において多様性を獲得する道筋を指します。このようなキャリアを描く理由は、まさに生成AIが提供する豊富な情報を「ただ集めるだけ」に留めず、異なる文脈で実践し、考察し、再構築することで初めて真価を発揮できるからです。たとえば、マーケティング領域で培った顧客インサイトの考え方をプロダクト開発に持ち込むことで、新たなユーザー体験の設計に役立てる――こうした横断的な知の掛け合わせが生まれる土壌をつくるには、自らのキャリアに意図的なジグザグを織り込むことが不可欠なのです。
このアプローチを続けるには、小さな失敗を恐れず、そのたびに学びを得るアジャイルマインドが欠かせません。そのため「いったい何を目指しているのかわからない」と周囲から違和感を持たれることもあるでしょう。しかし、その違和感こそが既存の枠組みを打ち破り、新たな化学反応を起こす源泉なのです。
自らキャリアのジグザグを描き続けることで、広がった視点と深まった専門性が融合し、越境型イノベーターとして真に価値あるイノベーションを生み出せるようになるはずです。
4. 自身が越境型イノベーターになるためには
越境型イノベーターとしての一歩は、毎日の「小さな選択」から始まります。まずは好奇心を行動に変えましょう。朝のコーヒータイムに、普段は見ない業界誌の見出しをざっと眺めたり、ランチには普段話さない部署の同僚を誘って業務外のテーマで意見交換したりする習慣を取り入れます。これだけでも、自分の専門領域の外側に新たな視座を得るきっかけになります。
AIを使うときは、まず「この回答は本当に正しいか?」「何が足りていないか?」と自問自答してください。AIの出力を受け身で受け取らず、その先にある課題を想像し、小さなプロトタイプを手早く作ってみる。たとえ失敗しても、それを「次に生かす学び」としてメモに残しておくことで、自分の思考回路はどんどん鍛えられます。
また、自分の学びを言語化して社内ブログやSNSに投稿することも効果的です。文章にする過程で自分の理解が深まり、意外な反応やアドバイスがもらえることで、新たなコミュニティとの接点が生まれます。週に一度でも良いので、そのアウトプットの場を自分に義務づけると、情報の流動性が生まれ、越境力が自然と強まっていきます。
さらに、自省の時間を必ず取るようにしてください。夕方や帰宅前に、「今日は何を学び、どんな発見があったか」「明日は何を試してみようか」を短く振り返るだけでも、次の行動がクリアになります。小さな実験と振り返りを回し続けることで、知らず知らずのうちに越境型イノベーターとしてのスタンスが身についていくでしょう。
まとめ
生成AI時代においては、深い専門性とAIを介したドメイン横断力の両立こそが真の差別化要因です。
日々の業務の中で好奇心をアクションに変え、AIと対話しながら小さな実験を重ね、学びをアウトプットし続ける──こうした地道な取り組みの積み重ねが、越境型イノベーターとしての道を拓きます。
自らジグザグ型キャリアを描きながら、新たな価値を創り出していきましょう。
私自身も、AIと対話しながら日々の学びを形にしていきたいと思っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいイノベーションを!