みなさん、こんにちは。
先日、「日本の製造業ではIoT(Internet of Things)によるデータ基盤の構築が進んでいない」という記事を書きました。
しかし、そんな状況を変えようと、頑張っている自治体もあります。その一つが福岡県です。
福岡県工業技術センターが、IoT導入を支援する便利なキットを開発し、しかもオープンソースソフトウェアとして無料で公開しているのです!
このキットの概要と、実際に試してみてどんなことができるのか、早速チェックしてみましたのでご紹介します。
無償公開されている2つのシステム
福岡県工業技術センターのIoT導入支援キットダウンロードページからダウンロードできるのは、主に以下の2つのシステムです。
- IoT導入支援キット
- センサーのデータをまとめて管理して、見やすく表示してくれるシステムです。
- Braveridge社製のBravePiやBraveJIGという機器に接続できるセンサーと、USBカメラに対応しています。
- Raspberry Pi 4用のOSイメージとして配布されています。
- システムの裏側では、Node-REDというローコード開発ツールが使われています。
- 生産進捗管理システム YokaKit
- こちらは、トヨタ生産方式の進捗管理と設備の稼働状況を見える化してくれるシステムです。
- 上記の「IoT導入支援キット」と連携して使えるようになっています。
- Raspberry Pi 4用のOSイメージと、ソースコードが配布されています。
- Laravelというフレームワークを使って作られたオリジナルシステムで、外部との連携にはNode-REDも使われています。
今回は、まずこの中の「IoT導入支援キット」を実際にダウンロードして試してみましたので、その感想を包み隠さずお伝えしたいと思います!
IoT導入支援キットを使ってみた!
IoT導入支援キットは、基本的にはRaspberry Pi 4で使うことを想定しているようですが、VMイメージとしてWindowsで動かせるバージョンもあります。(ただし、Windows版はBraveJIGのみの対応とのこと。)
今回は、手元にあったRaspberry Pi 4を使って試してみました。
初期設定は意外とスムーズ
まずは福岡県工業技術センターのウェブサイトからVer.4.2.2(2025/7/31時点の最新版)のOSイメージをダウンロード。サーバーの問題なのか、ダウンロード速度は非常に低速ですので、気長に待ちましょう。
次に、SDカードにOSイメージを書き込みます。この辺りの作業は、Raspberry Piを使ったことがある方ならおなじみですね。
SDカードをRaspberry Pi 4にセットして、USBカメラを接続し、いざ電源オン!
すると、見慣れたRaspberry Pi OSが起動しました。まずは、事務所のネットワーク環境に合わせてネットワーク設定を行います。
その後、デスクトップにあったディスクサイズの拡張スクリプトを実行して再起動。これで初期設定は完了です!意外とあっさり終わりました。
IoT導入支援キットのダッシュボードにアクセス!
IoT導入支援キット(Node-RED)は、初期設定が終わると自動的に起動するようになっているみたいです。同じネットワークに接続された別のPCから、指定された http://ipアドレス:1880/ui/
にアクセスしてみると、
接続したUSBウェブカメラの映像がブラウザに表示されました!

何も設定していないので、なかなか感動です。どうやら、mjpg-streamerが自動起動しているようです。
管理画面を一通り確認してみましたが、どうやら基本的にはBraveridge社製のBravePiボードを装着するか、BraveJIGを使わないと、画面から新しいセンサーを追加することはできないようです。
オリジナルセンサーの追加に挑戦してみたが…
残念ながら、私はBravePiもBraveJIGも持っていません。
「これだと何も試せないのか…」と少しがっかりしましたが、説明書をよく読んでみると、なんとWebAPIを使ってオリジナルのセンサーを追加できるとのこと!
これは試してみるしかない!と意気込んでWebAPIのドキュメントを読んで試してみたのですが、以下のエラーが出てしまい、センサーを登録することができませんでした。
{"message":"unknown format \"uint32\" is used in schema at path \"#/components/schemas/Sensor/properties/count\""}
WebAPIの機能はSwaggerというツールを使っているようなので、詳しく調べれば原因を特定してデバッグできるかもしれませんが、今回は時間切れで断念しました。
オリジナルのセンサーを使いたい場合、Node-REDに自分でノードを追加してカスタマイズするという方法もあります。実際、http://ipアドレス:1880/
でNode-REDにアクセスできますし、Node-REDへのリンクもRaspberry Pi のデスクトップ上に設置されています。

ただ、この方法は将来のIoT導入支援キットのバージョンアップで使えなくなる可能性もあるので、修正版が出てくるのを気長に待つのが賢明かもしれません。
IoT導入支援キットを使ってみた感想
実際にIoT導入支援キットを使ってみて感じたことをまとめます。
良い点
- センサー値の収集と可視化に特化している
- 対応機器を持っていれば、比較的簡単にセンサーデータの収集とリアルタイムでの可視化を始められそうです。
- Node-REDベース
- ローコード開発ツールであるNode-REDがベースになっているため、ある程度の知識があればカスタマイズの余地がありそうです。
- 無償で利用できる
- これだけの機能が無料で試せるのは、非常にありがたいです。
- Raspberry Piと連携
- 手軽に入手できるRaspberry Pi上で動作するため、導入のハードルが比較的低いです。
少し気になる点
- 対応機器が必要
- BravePiやBraveJIGを持っていない場合、標準機能だけでは拡張性に限界があります。
- 誰でも簡単に使えるわけではない
- センサーの設定やネットワークの設定など、ある程度の知識は必要になります。
- 業務改善に直結するわけではない
- このキットはあくまでデータ収集と可視化の基盤であり、収集したデータをどう活用するかはユーザー次第です。導入しただけで業務が劇的に改善する、というわけではありません。
- 大規模工場には不向きかも
- Raspberry Pi 1台で全てのセンサーデータを処理するのは、性能的に難しいかもしれません。データ収集用と割り切って、別途サーバーを構築する必要がありそうです。
どんな工場に向いているのか
このIoT導入支援キットは、
- まずはIoTでどんなことができるのか試してみたい
- 特定の設備のセンサーデータを手軽に可視化してみたい
といったニーズを持つ小規模な工場に向いているのではないかと感じました。WebAPIが正常に動作すれば、さらに活用の幅が広がりそうです。
Node-REDはローコードで簡単にシステムが作れると言われますが、実際に業務で使えるシステムを構築するには、設計やある程度のプログラミング知識が不可欠です。そう考えると、このIoT導入支援キットをベースにカスタマイズしていくのは、ゼロからNode-REDでシステムを構築する手間と時間を考えれば、十分価値があると思います。
YokaKitにも期待!
今回はIoT導入支援キットのみ試してみましたが、生産進捗管理システムのYokaKitも非常に興味深いです。トヨタ生産方式に特化したアプリケーションとのことなので、まずはトヨタ生産方式の基本をしっかり学んでから、試してみたいと思います。
まとめ
福岡県工業技術センターのIoT導入支援キットは、無償で手軽にIoTの壁を突破することができる、非常に魅力的なツールだと感じました。対応機器をお持ちの方や、Node-REDに触れたことがある方なら、実際に試してみる価値ありです!
現状、WebAPIの不具合は気になりますが、これが解消されれば、さらに多くのセンサーに対応できるようになり、活用の幅も大きく広がるでしょう。今後のアップデートに期待したいですね。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいIoTライフを!