みなさん、こんにちは。
つい先日のこと、仕事で利用しているPCでWindows Updateを実行した後、それは突然発生しました。
プリンターが動かない、印刷できない!
Windowsの設定でプリンターの状態を確認すると、やはり「使用不可」になっていました。「またか…」私はそう思いました。なぜなら、過去にも同じような経験が何度もあるからです。
日々の業務で当たり前のように使っているプリンターが、何の前触れもなく突然動かなくなってしまったら、本当に焦りますよね。
特にこの現象、Windows Updateの後に頻繁に発生すると感じている方も多いのではないでしょうか。実はこの「Windows Updateが原因でプリンターが使えなくなる」というトラブルは、決して珍しいことではありません。
今回は、なぜこのようなことが起こるのか、そして今後プリンターを取り巻く環境がどう変わっていくのかについて解説していきます。
なぜWindows Updateでプリンターが動かなくなるのか?
Windows Updateは、OSのセキュリティ強化や機能改善のために定期的に行われます。しかし、このアップデートが既存のプリンタードライバーと衝突することが少なくありません。
プリンタードライバーは、Windowsとプリンターが「会話」するための翻訳機のようなものです。OSの「言語」がアップデートで変わると、翻訳機が対応できなくなり、結果としてプリンターが正常に動作しなくなる、という事態が起こるのです。特に、メーカー独自の機能を持つドライバーを使用している場合、Windows Updateによってそのドライバーが無効化されたり、互換性の問題が発生したりすることはよくあることです。
この問題は、特定のメーカーに限った話ではありません。キヤノン、エプソン、ブラザー、HP、リコーなど、多くのメーカーのプリンターで同様の報告が上がっています。Microsoftもこの問題を認識しており、過去には特定のアップデートで大規模なトラブルが発生したこともあります。
「なぜMicrosoftはこの問題を何年も解決できないのだろう?」と感じる方もいるかもしれません。実は、この問題は、OSと数多あるプリンタードライバーの組み合わせの複雑さに起因しているのです。そのため、解決することが非常に困難でした。
そして現在、Microsoftはこの根本的な問題を解決するために動いています。いや、Microsoftだけでなく、印刷システム全体がこの問題を解決するために大きな転換期を迎えているのです。
今後のプリンター環境はどうなるのか?Microsoftの目指す方向
このようなトラブルが頻繁に起こる現状に対し、Microsoftは大きく舵を切ろうとしています。そのキーワードとなるのが「Mopria/IPP (Internet Printing Protocol)」です。
Microsoftは、Windowsの印刷システムを標準化し、メーカー独自のプリンタードライバーへの依存を減らす方向へと進んでいます。Mopria/IPPに対応したプリンターであれば、Windowsに標準搭載されているドライバーで基本的な印刷機能が利用できるようになります。これにより、個別のドライバーの互換性問題が減り、Windows Updateの影響を受けにくくなることを目指しているのです。
まさに、私たちは今、その移行時期の真っただ中にいるのです。
具体的な変更スケジュールと影響
Microsoftは、以下のようなスケジュールでこの変更を進めています。
- 2026年1月15日
- Windows 11 以降と Windows Server 2025 以降では、新しいプリンタードライバーはWindows Updateで公開されなくなります。
- 2026年7月1日
- プリンタードライバーの優先順位が変更され、Windows標準のIPPドライバーが優先されるようになります。
- 2027年7月1日
- セキュリティ関連の修正を除き、サードパーティ製プリンタードライバーの更新が制限されます。
これは、近い将来、メーカー独自のドライバーの提供が段階的に終了していくことを意味します。もし現在お使いのプリンターがMopria/IPPに対応していない場合、Windows Updateのたびにドライバーの再インストールが必要になったり、一部機能が使えなくなったりといった問題が続く可能性があるということです。
まとめと今後の対策
「Windows Updateでプリンターが動かなくなる」という現象は、一過性のバグではなく、Windowsの印刷システム全体が大きく変わろうとしている過渡期に起こりうる問題です。
もし現在この問題に直面している場合は、プリンターメーカーの公式サイトから最新のドライバーをダウンロードして再インストールすることが、最も一般的な解決策となります。
しかし、長期的には、今後のプリンター導入やリプレースの際には、Mopria/IPPに対応したモデルを選ぶことを強くお勧めします。Mopria/IPPへの対応はLinuxでも進められています。これにより、OSの種類やアップデートに左右されにくい、安定した印刷環境を構築できるようになるはずです。
なお、macOSでは、AirPrintという標準機能が既に広く利用されており、Mopria/IPPと同様にドライバーレス印刷を可能にしています。Mopria/IPPに対応しているからといって必ずしもAirPrintに対応しているわけではありませんが、多くのプリンターメーカーは両方に対応した機種をリリースしていますので、今後はMopria/IPPとAirPrint両対応の機種を選ぶと、様々なOS環境で安心して利用できるでしょう。
今はプリンターを取り巻く環境にとっての過渡期。そのため、一時的にトラブルが多いかもしれませんが、これはより安定した未来の印刷環境へと向かうための変化です。この変化が落ち着くまで、しばらくは注意深くWindows Updateを行い、プリンターの動作確認を怠らないようにしましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい印刷ライフを!
参考リンク
Microsoftの移行スケジュールに関する情報:
- Windows 上のサード パーティ製プリンター ドライバーのサービスプランの終了
- プリンタードライバーのライフサイクルに関する詳細が記載されています。
Mopria Allianceについて:
- Mopria Alliance 公式サイト
- Mopriaの理念、対応製品、技術情報などが確認できます。
AirPrintについて:
- AirPrint を使って iPhone、iPadからプリントする – Apple サポート (日本)
- AppleデバイスでのAirPrintの利用方法について詳しく説明されています。
- AirPrintについて – Apple Support (日本語)
- AirPrintの概要がわかりやすくまとめられています。