みなさん、こんにちは。
Microsoft Word、Excel、PowerPoint、AccessなどのOfficeアプリケーションを使っていると、とても便利な機能がありますよね。それは、「最近使ったファイル」や「よく使う場所」の履歴が自動的に表示される機能です。
しかし、この便利な機能が、思わぬ情報漏洩のリスクにつながる可能性もはらんでいます。過去のファイル名が第三者に見えてしまうことで、プライバシーや機密情報が漏れてしまうかもしれません。
個人で使っているPCは気を抜きやすいですが、実は思わぬところから情報が漏れてしまうこともあるのです。多くの人は仕事で使っているファイルを自宅で開いたことが一度や二度はあるはずですから。
そこで今回は、Microsoft 365(旧 Office 365)環境で、この「最近使ったファイル」を非表示にする方法から履歴情報を完全に削除する方法までの具体的な手順を自動化スクリプトを交えて解説します。
ステップ1:まずは「最近使ったアイテム」を非表示にする
まずは、最も手軽にできる「最近使ったアイテム」の非表示設定から見ていきましょう。これは、Officeアプリケーションの設定で簡単に行えます。
Word / Excel / PowerPoint / Access 共通の設定手順
- Officeアプリ(Word、Excel、PowerPoint、Accessのいずれか)を起動します。
- 画面左上の[ファイル]をクリックし、次に左側のメニューから[オプション]をクリックします。
- 表示されたオプションウィンドウで、[詳細設定]タブを開きます。
- 「表示」セクションまでスクロールし、以下の項目を変更します。
- 「最近使用したドキュメントの一覧に表示するドキュメントの数」を「0」に設定します。
- 「最近使用したドキュメントの一覧に表示するドキュメントの数」を「0」に設定します。
- [OK]をクリックして設定を保存します。
これで、「最近使ったアイテム」の一覧表示が無効になります。
注意点として、この設定はあくまで「非表示」にするだけです。
履歴情報そのものはOfficeアプリケーションの内部に保持されています。つまり、見えないだけでデータとしては残っている状態です。レジストリやクラウド同期情報としても残る可能性があるため、完全に履歴を消したい場合は次のステップに進みましょう。
なお、必要であれば、エクスプローラーのファイルオプションで「最近使用したファイルを表示する」「Office.comのファイルを表示する」のチェックも外します。

これで、エクスプローラーからも「最近使用したファイル」と「Office.comのファイル」が非表示になります。
ステップ2:履歴を完全に削除する方法(Microsoft 365対応)
Microsoft 365環境では、Officeの履歴はユーザーアカウントに紐づく「LiveId_xxx」という領域に保存されています。この領域を削除しない限り、たとえ非表示にしても、何かの拍子に履歴が再表示されてしまうことがあります。
この領域はレジストリに保存されており、手動で削除することも不可能ではありません。しかし、複数のOfficeアプリケーションやバージョンに対応するためには、スクリプトを使うのが非常に便利です。
自動削除スクリプト(バッチファイル)
以下のスクリプトは、Word、Excel、PowerPoint、Accessの各アプリケーションのユーザー履歴(User MRU)以下に存在する「LiveId_xxx」ごとの「File MRU」(ファイル履歴)および「Place MRU」(場所履歴)を削除します。
delete_office_mru.bat
@echo off
chcp 932 >nul
setlocal enabledelayedexpansion
echo ==== Microsoft 365 の User MRU 履歴を削除中 ====
set VERSIONS=16.0 15.0
set APPS=Word Excel PowerPoint Access
for %%V in (%VERSIONS%) do (
for %%A in (%APPS%) do (
set "BASEKEY=HKCU\Software\Microsoft\Office\%%V\%%A\User MRU"
for /f "tokens=*" %%L in ('reg query "!BASEKEY!" 2^>nul ^| findstr /R "LiveId_"') do (
reg delete "%%L\File MRU" /f >nul 2>&1
if !errorlevel! == 0 echo 削除: %%L\File MRU
reg delete "%%L\Place MRU" /f >nul 2>&1
if !errorlevel! == 0 echo 削除: %%L\Place MRU
)
)
)
endlocal
echo 完了しました。Officeを再起動してください。
pause
スクリプトの使い方
- メモ帳などのテキストエディタを開き、上記のスクリプトをすべてコピー&ペーストします。
- ファイルを「delete_office_mru.bat」という名前で保存します。
重要: 保存時の文字コードは必ず「ANSI」を指定してください。他の文字コードだと文字化けしたり、スクリプトが正しく動作しない可能性があります。 - 保存した「delete_office_mru.bat」ファイルを右クリックし、「管理者として実行」を選択して実行します。
注意:レジストリの操作には管理者権限が必要です。レジストリ操作はシステムを壊す可能性があり、最悪の場合Windowsが起動しなくなる場合もありますので、慎重に作業してくだささい。
このスクリプトを実行することで、Microsoft 365の「最近使ったファイル」の履歴が完全に削除されます。
補足:表示上の履歴ファイルも削除する場合
Officeの「最近使ったファイル」の履歴は、ショートカットファイル(.lnkファイル)としても保存されている場合があります。Windowsのスタートメニューやジャンプリストに表示される履歴もこれらが原因です。完全に履歴を一掃したい場合は、上記のバッチファイルに以下のコマンドを追加することで、これらのショートカットファイルも同時に削除できます。
del /Q "%APPDATA%\Microsoft\Office\Recent\*"
del /Q "%APPDATA%\Microsoft\Windows\Recent\*"
これらを追加すると、Officeアプリケーション内だけでなく、Windows全体の「最近使ったアイテム」関連の表示もクリアされます。
まとめ
ここまでご紹介した方法を表でまとめましょう。
方法 | 内容 | 効果 |
Officeのオプション設定 | 最近使ったアイテムを非表示にする | 表示されなくなるが履歴情報は内部に残る |
LiveId_xxx の削除 | Microsoft 365の履歴を完全に削除 | アカウントごとの履歴が消去される |
.lnk ファイル削除 | 表示上の履歴ファイルも一掃 | スタートメニューやジャンプリストの履歴もクリア |
注意点
- スクリプトはレジストリを操作するため、慎重に実行してください。 誤って必要な履歴を削除しないように十分ご注意ください。
- Microsoft アカウントや OneDrive を利用している場合、クラウド同期によって履歴が復活することもあります。 この点については、定期的な削除を行うなど、運用の工夫が必要になる場合があります。
- Microsoft 365では履歴管理が複雑になっているため、「非表示」設定だけで安心せず、情報漏洩のリスクを最小限に抑えるためにも、可能であれば定期的な履歴の完全削除をおすすめします。
このスクリプトを活用して、より安全でクリーンなOffice作業環境を整え、安心して業務に取り組んでいただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいOfficeライフを!