制約を力に変える – 難病と共に歩む人々から学ぶシステム開発の教訓

みなさん、こんにちは。

先日、福岡のアクロス福岡で開催された市民公開講座「可能性をひらく」に参加しました。この講座は、難病と共に生きる方々やその家族の体験談、そして医療・福祉関係者や市民が「可能性」について語り合う場でした。

登壇者の話を聞くうちに、「病気や障害と共に生きる」というテーマが、実はシステム開発と驚くほど共通していることに気づかされました。今回は、その学びをシステム開発の教訓としてまとめてみました。

 


 

1. 「できる」至上主義から抜け出す

 

最初の九州大学の内田若希先生の講演では、「エイブリズム(健常者中心主義)」という言葉が印象的でした。「できる」に価値を置きすぎると、できない人が排除されてしまうという問題提起です。

これは、東京パラリンピック開会式で語られた「勇気を出して翼を広げれば、どこへでも行ける」という障害者へのメッセージに対し、「飛べない人はどうなるの?」という問いかけとして示されました。

この考え方は、システム開発のマネジメントにもそのまま当てはまります。最新のAI技術や流行りの機能を詰め込んだ「すごいことができる」システムを目指すと、特定の「できる」開発者に頼りがちになり、一部のメンバーが置き去りにされてしまうことがあります。それどころか、できない人を切り捨ててしまう選択をしてしまうこともあるでしょう。

マネジメントにとって重要なのは「チームの力を最大化すること」です。一部のメンバーにできないことがあっても、それぞれの居場所を確保し、チームの総合力を高めることにこそ価値があるのです。

教訓: すべてのメンバーを同じ基準で測るのではなく、多様性を前提にしたマネジメントを意識する。

 


 

2. 継続する工夫が最大の成果を生む

 

パーキンソン病友の会の卓球選手、小山理恵さんのストーリーも心に残りました。

「卓球を続けるために、生活を調整し、工夫を積み重ねてきた」ことで世界大会に出場し、ついに世界チャンピオンの称号も手にしたそうです。

「病気に勝った」と思ったものの、その後の大会では身体が動かなくなるという挫折が訪れたそうです。最後に響いたのはライバル選手からの「病と闘うのではなく、共存してほしい」という言葉でした。

これは、システム開発そのものに通じます。「完璧なシステムを一度で作り切る」ことを目指すと、必ず無理が生じます。仮に作りきれたとしても、その完璧さはひとときの間だけです。むしろ、「制約がある中で、どう工夫して継続していくか」が成果につながるのです。

教訓: 大規模な改修よりも、小さな改善を継続することがシステムを強くする。

 


 

3. 無理ではなくできることを探す

 

先天性の病気を持ちながらeスポーツで活躍する岩屋晃平さんの話も学びになりました。体調の制約がある中でも、「努力が成果に直結する」「社会とつながれる」ことを重視し、その結果、自分が好きなeスポーツでそれが実現できると感じ、鍛錬の結果、国内外の大会で成績を残せ、社会とつながり続けることができているそうです。現在では選手だけでなく、コーチや専門学校の講師としても活躍しています。

無理をするのではなく、できることを探す」という姿勢は、技術選定やプロジェクト運営にも共通します。

私たちは理想的な技術ばかりを追い求めがちですが、実際には予算、期間、メンバーのスキルといった制約があります。その中で最も効果を発揮できる「できること」を選ぶのが、現実的で強い戦略です。エイブリズムの話と関係しますが、自分ができないことに思い悩むのではなく、できることに集中するのは大事なことです。

教訓: 技術選定は理想ではなく、制約とのフィット感を優先する。

 


 

4. 伴走者の存在が挑戦を支える

 

ベーチェット病当事者であるNPOベーチェット病協会の妹尾耕基さんの「伴走」との出会いの話も印象的でした。視野に大きな制約がある中、一人で走るのは辛い。しかし、伴走者がいれば走ることができます。さらに、「誰かの伴走者になる」ことで、新しい可能性が開けると語られました。

システム開発でも同じです。一人で抱え込むと行き詰まりますが、仲間と伴走し合えば、挑戦は楽しくなります。レビュー、相談、ペアプログラミング、ユーザーテスト。これらはまさに「伴走」の文化です。

教訓: チームは競争相手ではなく伴走者です。互いに支え合うことで、可能性は広がる。

 


 

まとめ – どの扉を開けても、自信を持って進むことが重要

 

この講座のメッセージで一番重要だと感じたのは、「病気や障害があっても、自分の人生の決定権は自分にある」ということでした。そして、その選んだ道を正解にするのは自分自身です。

システム開発も同じです。制約があるのは当たり前。完璧でなくても、自分たちが選んだ道を「正解」にしていくことが大切です。

  • 開発メンバーを置き去りにしないマネジメント
  • 続けられる工夫
  • 無理ではなく「できること」を選ぶ
  • 伴走し合うチーム

これらを積み重ねていくことで、どんなプロジェクトでも「可能性の扉」を開けられるはずです。そして、その扉の先に進むのは私たち自身。どの道を選んでも、自信を持って前に進んでいきたいですね。

 

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、よいシステム開発を!

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