なぜウェブ開発でC#は敬遠され、業務アプリで好まれるのか? — 歴史と体験を交えて考察

みなさん、こんにちは。

「C#って業務システムには強いけど、ウェブではあまり聞かないよね」

そんな声を耳にしたことはないでしょうか?

実際、現場でC#を長年扱ってきたエンジニアにとって、業務アプリケーションにおけるC#の安定感は揺るぎないものです。ところがウェブ開発の現場では、なぜかC#が避けられることが多い。この違和感には、単なる言語の好みでは片付けられない「歴史的背景」があります。

今回は、2000年代のWindowsサーバーからLinuxサーバーへの流れをふまえつつ、なぜC#が敬遠されるようになったのか、そして本来C#が持つ強みについて考察してみます。

 


 

ウェブ開発でC#が敬遠されがちな理由

 

表面的な理由はシンプルです。

フロントエンドやウェブ界隈では、Node.js/TypeScriptとVS Codeを組み合わせた軽快な開発スタイルが広まりました。一方でC#は、Visual StudioとWindowsに深く結びついていたため、「重そう」「Windows専用」というイメージが先行してしまったのです。

しかし、この背景にはもっと根深い「時代の流れ」があります。

 


 

2000年代に何が起きたのか – WindowsサーバーからLinuxサーバーへの移行

 

2000年代、多くの企業システムは Windows Server + IIS + ASP.NET という構成で開発されていました。ところが、サーバーの更改や再構築のタイミングで、Linuxサーバーへ移行する動きが一気に広がります。その理由は大きく3つあります。

  1. クラウド化と仮想化の普及
    • AWSやGoogle Cloudが登場し、サーバーをクラウドで運用するのが当たり前になりました。クラウド事業者の標準OSはLinuxが中心であり、可搬性や運用性もLinuxが有利でした。
  2. コスト最適化とオープンソースの台頭
    • Windowsサーバーにはライセンス費用がかかります。対してLinuxは無償で、NginxやApache、PostgreSQL、MySQLといった豊富なOSSエコシステムを活用できるため、運用コストを大幅に抑えられました。
  3. クラウドネイティブな思想との親和性
    • コンテナやマイクロサービスといった新しい設計思想に、Linuxの柔軟さがマッチしていました。

この結果、WindowsサーバーのASP.NETで動いていたシステムが、Linuxと別言語に置き換えられるケースが激増しました。この時に開発メンバーの中に「LinuxではC#を採用するメリットはない」という価値観が形成され、その印象が今でも残っているのです。

 


 

当時LinuxでC#が採用できなかった理由

 

Linuxへの移行が進んだ2000年代、なぜC#はついていけなかったのでしょうか。そこには技術的な制約がありました。

  • .NET FrameworkがWindows依存だった
    • ASP.NETはIISやWindows APIに深く依存しており、Linux上では動きませんでした。Monoという互換実装はありましたが、安定性やパフォーマンスの面で本番利用には不安が残りました。
  • IIS固有機能との結びつき
    • 認証やキャッシュ管理など、ASP.NETの強みはIISと一体で動く部分にありました。それをLinuxに持ち込むのは困難でした。
  • 運用・管理ツールの未成熟さ
    • デバッグや監視、保守のためのツールはWindows環境を前提に整備されており、Linuxでは「サポートがないからやめておこう」という判断が多かったのです。

こうした理由から、システム更新のタイミングで「LinuxにするならC#はやめて、JavaやPHP、後にはRubyやPython、Javascriptに切り替えよう」という選択が一般的になっていきました。

 


 

それでもC#が業務アプリで好まれる理由

 

一方で、業務アプリケーションの分野では今もC#が強い支持を集めています。

  • 型安全性と堅牢性:静的型付けにより、大規模開発や長期運用に向いています。
  • Windows業務端末との親和性:クライアント環境がWindows前提なら、C#が一番自然です。
  • 既存資産と開発効率:過去のライブラリやツールを流用できます。
  • 業務向け機能の豊富さ:LINQやEntity Frameworkなど、業務ロジックを記述しやすい仕組みが豊富です。

特に「業務の中枢に据えるシステムを堅実に動かす」ことを求めるなら、C#は他に代えがたい安心感を持っています。

 


 

今こそ見直したいC#の適性

 

2016年のASP.NET Coreの登場で、C#はもはやWindows専用の言語ではなくなりました。Linuxでも軽快に動作し、クラウドやコンテナ環境とも親和性があります。

ウェブ開発でも「型安全性」「実行速度」「クロスプラットフォーム性」という強みを発揮できる時代になっています。逆にC#を採用することで、その会社はC#のプロフェッショナルだというブランド価値を高めることができるかもしれません。一方で、スピード感を重視するスタートアップなら、経験豊富な開発者の層が厚いNode.jsやPythonを選ぶのも正解です。

案件の性質や要件に応じて柔軟に選ぶことが大切です。

 


 

まとめ — 「過去の常識」にとらわれずに選ぶ

 

C#がウェブで敬遠される背景には、2000年代に起きた「WindowsサーバーからLinuxサーバーへの大移行」という歴史があります。当時は技術的にも商業的にもLinuxでC#を選ぶのが難しかったのです。

しかし、今は状況が大きく変わりました。C#はクロスプラットフォーム対応を果たし、ウェブでも業務でも力を発揮できる言語になっています。

大事なのは「昔の常識」ではなく「今の適性」。もしこれからはじめるプロジェクトが堅牢性・保守性を求めるなら、C#は再び有力な選択肢になるはずです。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、よい開発ライフを!

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