みなさん、こんにちは。
LLM(大規模言語モデル)を活用した生成AIが注目を集める昨今ですが、IoTシステムのような計算リソースが限られ、かつネットワークレイテンシを許容できない環境では、従来型のOCRエンジンが依然として重要な役割を果たしています。
本記事では、実際に検証を行った主要なOCRエンジンの特徴と活用シーンについて、私の独断と偏見で比較します。
それでは早速みていきましょう!
Tesseract OCR – 実績ある多言語対応エンジン
Tesseract OCRは、Googleがオープンソースとして公開している歴史あるOCRエンジンです。多言語対応が特徴で、各言語用のトレーニング済みモデルが提供されています。
特徴と注意点
- 多言語に対応しており、言語ごとに専用のライブラリが用意されている
- 画像の前処理が必須(ノイズ除去、二値化処理など)
- スクリーンキャプチャなら前処理にそれほど手間をかけなくても可
- 撮影した画像の場合はかなり慎重に前処理が必要
- 数字認識は相対的に精度が低い傾向にある
- ただし、画像の輪郭抽出処理を行い、言語設定を英語(eng)にすることで精度向上が可能
- 文字と背景が類似した色の場合、認識精度が著しく低下する
IoTシステムでの利用に際しては、画像の前処理部分を最適化することで、期待する認識精度を得ることができるでしょう。認識速度も満足できると思います。
EasyOCR – モダンで使いやすいOCRソリューション
EasyOCRは、最新の深層学習技術を活用しつつ、導入の容易さを重視して開発されたOCRエンジンです。
特徴と利点
- 「すぐに使える高性能OCR」を目指して開発
- 多言語対応で、特に英語での認識精度が高い
- GPU環境では処理速度が大幅に向上
- CPU環境でも動作可能だが、処理速度は低下
制約事項
- 画像の前処理が必要
- 文字と背景色が近似している場合の認識は苦手
- 日本語認識はTesseractと比較してやや精度が劣る
- EasyOCRの方が認識精度がよい場合もありましたが、認識が安定しているのはTesseractの方です。
IoTシステムでの利用時は、GPU非搭載環境での処理速度低下を考慮する必要があります。
keras-ocr – 高度な認識能力を持つディープラーニングベースOCR
keras-ocrは、Kerasを基盤とした最新のOCRエンジンで、特に困難な条件下での文字認識に強みを持ちます。
長所
- 黒背景に白文字などのハイコントラスト環境で高い認識精度
- 画像の前処理要件が比較的少ない
- 日本語認識に対応
実装上の課題
- GPUメモリを必要とし、リソース要件が高い
- 依存関係の解決が複雑
- 初回起動時に学習モデルの構築が必要
IoTデバイスでの利用には、メモリ要件とGPU要件が障壁となる可能性が高いため、導入前の十分な検証が必要かと思います。
SSOCR – 7セグメント特化型OCR
SSOCRは、7セグメントディスプレイの数字認識に特化した軽量なOCRエンジンです。
特徴
- 7セグメント文字に特化した高精度な認識能力
- C言語実装による軽量な動作
- Unix系システムに最適化
- Windows環境ではCygwinまたはWSLが必要
IoTシステムでの数値表示器の読み取りなど、特定用途では非常に有用なツールとなります。汎用OCRライブラリよりは圧倒的に認識精度が高いです。
まとめ
IoTシステムでOCRを活用する際は、以下の点を考慮して適切なエンジンを選択することが重要です。
- システムのリソース制約(メモリ、CPU/GPU)
- 認識対象の特性(一般文字、数字、7セグメントなど)
- 必要な前処理の程度
- 多言語対応の要否
特に組み込みシステムでは、TesseractとSSOCRを組み合わせることが現実的な選択肢となることが多いと思います。
一方、リソースに余裕がある場合は、EasyOCRやkeras-ocrの高度な認識能力を活用することで、より柔軟なソリューションを構築できます。
もっとも、リソースに余裕があるのであれば、ローカルにLLM環境を構築した方がよいかもしれませんね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。