Raspberry Pi で実現する監視カメラ構築〜USBカメラ比較実験レポート〜

Raspberry Pi で実現する監視カメラ構築

みなさん、こんにちは。

Raspberry Pi を用いた監視カメラシステムの構築では、最初に GPIO 接続のカメラモジュールが検討されます。しかし、実際には画質の低さ、フォーカスの不安定さ、狭い画角などの問題があります。

そこで、より高画質かつ柔軟な設定が可能なUSB接続のカメラに着目し、みかみ自身の実験環境で複数のモデルを検証しました。

各モデルの特徴や注意点、Linux 環境下での v4l2 による制御例などをまとめていますが、最終的には ロジクール C920n が最善と判断しましたので、その理由も解説します。

なお、以下の内容はすべて、みかみの実験環境での感想に基づくものであり、設置条件や照明状況により評価が異なる可能性があることをご了承ください。

 


 

監視カメラに求める基本要件

監視カメラとして USB カメラを採用する際、みかみでは、以下の点を重視しました。

  • HD画質以上の解像度
    画像内の文字を読み取りたいため、1280×720 以上で、細部まで鮮明に映像を捉えられること
  • オートフォーカス機能
    撮影距離や照明条件の変動に対して自動でピント合わせが行われること。ただし、場合によっては手動フォーカスで固定する運用も考える。
  • 短い最短撮影距離
    水槽監視など近距離撮影を行う場合、最短撮影距離が短いモデルが有利。
  • 広い画角
    監視対象エリア全体をカバーするため、広角レンズを採用していることが望ましい。ただし、広角レンズは歪みが生じる可能性もあるため、設置環境に応じた選定が必要。
  • 前面の不要な発光物の排除
    カメラ前面にLEDなどの発光物があると、映像の品質に悪影響を及ぼすため、発光の無効化ができること。できない場合は物理的な対策(例:テープで隠す)を施す。
  • 入手の容易性
    故障時に容易にかわりのカメラを入手できることが必要。

 


 

USB カメラ各モデルの比較実験結果

以下、みかみが Raspberry Pi と連携させた上で検証した各 USB カメラの特徴と実験結果をまとめます。なお、映像配信はmjpg-streamerを使っています。

1. ロジクール C270n

  • 撮影距離: 約333mm
  • 特徴:
    明るい環境では安定した映像が得られるものの、暗所では画質が劣化する傾向があります。また、画角が狭いため広範囲を撮影するには被写体との距離を十分に確保する必要があり、その際にフォーカスが甘くなる問題が発生しました。

 

2. ロジクール C920n

  • 撮影距離: 約178mm
  • 特徴:
    C920n は、近距離での撮影においても安定したオートフォーカス性能を発揮し、文字や細かいディテールも鮮明に映し出します。照明条件が変動して一時的にフォーカスがずれることはありますが、v4l2 による brightness、contrast、saturation などの各種パラメータ調整が可能なため、細かな補正が行えます。また、tilt_absolute を用いた台形補正も実現可能なため、上方から斜めに撮影する場合でも柔軟に対応できます。稼働中は前面にLED発光がありますが、それほど明るくはありません。

 

3. エレコム UCAM-C820ABBK

  • 撮影距離: 約178mm
  • 特徴:
    明るい環境、暗い環境の両条件下でフォーカスが安定する点が評価されました。ただし、暗い環境では画面が白飛びしやすいです。また、前面にかなり明るい常時点灯する青色 LED があるため、映像に不要な光が混入しないよう物理的対策が必要となります。

 

4. サンワサプライ CMS-V45S

  • 撮影距離: 約228mm
  • 特徴:
    高いフォーカス性能がある一方で、画角が狭いため被写体との距離を十分に取らなければなりません。結果として、細かい文字やディテールが潰れるリスクがあり、設置環境に合わせた注意深い設定が求められます。白飛びの問題はほとんど見られませんでした。

 

5. Anker PowerConf C300

  • 撮影距離: 約178mm
  • 特徴:
    高速なオートフォーカスが大きな魅力で、照明条件の急激な変化にも迅速に対応します。公式には Linux 非対応とされているものの、実際には v4l2 を用いた各種制御が可能で、台形補正に必要な tilt_absolute も利用できるため、柔軟性が高いです。

 

6. ELP USBFHD03AF-BA100

  • 撮影距離: 約163mm
  • 特徴:
    映像全体が暗くなりがちで、ちらつきも発生しやすい点が課題です。オートフォーカス機能は搭載されていますが、ピントが安定するまでに時間がかかるため、監視用途としては慎重な検討が必要です。

 

7. ELP USB4K02AF-KL100

  • 撮影距離: 約155mm
  • 特徴:
    4K 撮影に対応しており、将来的に高解像度映像が求められる場合に有用です。フォーカス性能は良好ですが、明るい環境下で白飛びが発生しやすいため、画像調整の工夫が不可欠です。

 

8. ELP USB8MP02G-SFV

  • 特徴:
    可変焦点レンズを採用しており、固定設置後に最適な設定を行えば、多少の照度変動にも対応可能です。しかし、完全に手動での調整が必要なため、事前の設定や運用の手間が発生する点に留意が必要です。

 


 

番外編:M5Stack Camera ~M5Stack UnitV2 M12 による検証結果

Raspberry Pi まで必要ないという場合、ESP32などのマイコンを使うことも検討できます。その中でもM5Stack Camera シリーズは注目に値します。番外編としてM5Stack UnitV2 M12 を入手し検証しました。M5Stack UnitV2 M12 は、Linux が動作する AI カメラ付きマイコンとして、IoT や組み込みシステム向けに設計されています。

  • 特徴:
    小型で手軽に組み込める点は魅力ですが、実際の検証では発熱量が多いことが問題となりました。常時稼働が求められる監視カメラとしては、発熱により安定動作が難しく、長時間の運用には不向きであると感じました。また、カメラも固定焦点かつ広角レンズでかなり歪みが生じますので、設置場所が限られます。

 


 

みかみが選んだ最善のカメラ:ロジクール C920n

みかみの実験環境において、ロジクール C920n は以下の理由から最も優れたパフォーマンスを発揮しました。よって、現在の運用で採用しています。

  • 安定したオートフォーカス:
    撮影距離約178mm という環境下でも、フォーカスが迅速かつ正確に合い、文字や細部のディテールが鮮明に映し出される点が大きな評価ポイントです。
  • 豊富な v4l2 コントロール:
    brightness、contrast、saturation などの各種パラメータを細かく調整でき、上方から斜めに撮影する際に必要な台形補正も tilt_absolute 制御により対応可能です。
  • 総合的な画質:
    明るい環境はもちろん、暗所での撮影においても十分な画質が維持され、監視用途として実用性が高いと判断されました。
  • 入手のしやすさ:
    ロジクール C920n は一般的な家電量販店ならばどこでも入手可能です。

 


 

まとめ

今回の比較実験は、みかみ自身の実験環境に基づく感想と評価です。

各モデルには一長一短があるものの、現状の運用においては ロジクール C920n が最もバランスが取れており、安定した映像品質と柔軟なパラメータ調整が可能なため、監視カメラシステムの中核として最適な選択肢となりました。

GPIO 接続カメラモジュールの限界を補う USB カメラは、Raspberry Pi を活用した監視カメラ構築において非常に有力な選択肢です。各モデルの特性を十分に理解し、実際の設置環境に合わせた最適な機器選定を行っていただければ、より安定した監視システムの実現につながるでしょう。

今回もお読みいただきありがとうございました。

それでは、よいIoTライフを!

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