みなさん、こんにちは。
先日、某IT大手企業が主催する製造業のDXセミナーに参加した際、セミナー講師である大手製造業の担当者が自社の生産設備データ統合における苦労話を語っていました。
メーカーや機種ごとに異なる装置の通信規格が壁となり、最終的にはユーザー企業側から標準化団体を立ち上げ、装置メーカーを巻き込んで通信とデータの標準化を目指すという壮大な計画を立てているとのこと。
しかし、長年、業界を見てきた私から言わせれば、それはあまりにも現実離れした戦略です。標準化の道のりは長く、その間にも設備は老朽化し、予期せぬダウンタイムのリスクは増大します。競争が激化する現代において、いつになるかわからない標準化を待つ余裕など、どの企業にもないはずです。
そこで私が提唱したいのは、もっとシンプルで、すぐに始められる「カメラソリューション」を活用した生産設備のIoT化です。
通信規格の壁を越える、カメラの可能性
ご存知の通り、従来の生産設備IoT化の最大のネックは、メーカーや機種ごとに異なる通信規格への対応でした。しかし、カメラを用いたソリューションならば、この問題を根本的に回避できます。
なぜなら、カメラは「見る」ことで情報を取得するからです。
近年、このカメラによる画像・動画解析ソリューションは、目覚ましい進化を遂げています。
特に、自動運転技術に対する世界的な投資がここ数年で活況を呈しており、その結果、高性能なカメラデバイスの開発、リアルタイムでの画像・動画解析を可能にするAIアルゴリズムの機能向上が著しいです 。これらの技術革新により、以前は高価であったカメラソリューションが、他のIoT化ソリューションと比較して相対的にお得感が増してきています。
具体的には、以下のような活用が考えられます。
- モニタ画面のデータ化
設備のモニタ画面をカメラで撮影し、OCR(光学文字認識)技術を活用することで、表示されている数値データやエラーコードなどをデジタルデータとして抽出できます 。これにより、PLCなどの制御システムに直接アクセスすることなく、重要な情報を収集できます。
- 動作状況の可視化
設備の動作状況を動画で撮影することで、異常な動きや変化を目視で捉え、データ化することが可能です 。熟練者の目視による点検を代替し、客観的なデータに基づいた状態監視が可能になります。
- エッジAIによるリアルタイム解析
収集した画像や動画データは、エッジデバイスに搭載したAI(人工知能)によってリアルタイムに解析できます 。異常な兆候を即座に検知し、アラートを発することで、ダウンタイムを未然に防ぐことができます 。
- 熱画像解析による予兆検知
熱画像カメラを活用すれば、設備の異常な発熱を検出し、故障の予兆を捉えることができます 。電気系統のトラブルや機械部品の摩擦熱などを早期に発見し、計画的なメンテナンスにつなげることが可能です 。
カメラソリューション導入のメリット
カメラソリューションの導入は、単に通信規格の問題を回避するだけでなく、以下のような多くのメリットをもたらします。
- 幅広い機種への対応
通信規格に依存しないため、新旧問わず、様々なメーカーや機種の設備に適用できます。
- 容易な導入
大規模なシステム改修や複雑な配線工事が不要な場合が多く、比較的容易に導入できます。
- 柔軟な拡張性
必要に応じてカメラの増設や設置場所の変更が容易に行えます。
- 多角的なデータ収集
モニタ画面の数値データだけでなく、設備の物理的な状態や動作状況など、多角的な情報を収集できます 。
- コスト効率
通信規格対応のための開発コストや、複雑なシステム構築費用を抑えることができます 。
導入における懸念点と対策
もちろん、カメラソリューションの導入にあたっては、いくつかの懸念点も考えられます。
- 画像解析の精度
照明条件や撮影角度など、環境要因によって解析精度が影響を受ける可能性があります 。適切なカメラの選定や設置場所の工夫、AIアルゴリズムの調整などによって、精度向上を図る必要があります 。
- プライバシーとセキュリティ
製造現場の映像を記録・分析する際には、従業員のプライバシーへの配慮や、データへの不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策が不可欠です 。
- OCRの精度
モニタ画面の文字をOCRで読み取る場合、フォントの種類や表示状態によって認識精度が変動する可能性があります 。最新のディープラーニングを活用したOCR技術の導入や、読み取りやすい表示への改善などが有効です 。
これら懸念点への対策も大変で一筋縄ではいきません。しかし、規格の標準化を黙って待つよりはカメラソリューションの導入を進める方が賢明な選択ではないでしょうか?
まとめ:まずは「見る」ことから始めよう
大手製造業が目指すような標準化は、理想ではありますが、実現までに多くの時間と労力を要します。
その間に、設備の老朽化は進み、ダウンタイムのリスクは増大の一途を辿ります。
今、私たちが取るべき現実的な戦略は、既存の設備を最大限に活用し、比較的容易に導入できるカメラソリューションから生産設備のIoT化を始めることです。
まずは「見る」ことから始め、得られたデータを分析し、ダウンタイム削減や生産性向上につなげていく。それが、変化の激しい現代において、製造業が生き残るための賢明な選択だと私は確信しています。
ちなみに著者はMEGTARというカメラソリューションを用いたの装置監視システムを企画・開発しておりますので、もしご興味があればお問い合わせください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいIoTライフを!