みなさん、こんにちは。
Raspberry Pi OS の標準デスクトップ環境(PIXEL)は見た目こそ洗練されていますが、動作が重く感じることがあります。そこで、軽量かつ美しいデスクトップ環境「Enlightenment」を導入し、なおかつ、Windows から リモートデスクトップで操作する方法をご紹介します。
Windowsでは、標準でリモートデスクトップ用のRDP(Remote Desktop Protocol)が搭載されていますので、こちらを使用します。
前提条件
- Raspberry Pi(Raspberry Pi OS Lite または Desktop インストール済み)
- ネットワーク経由で SSH 接続または直接コンソール操作が可能
- Windows 側に「リモートデスクトップ接続」が利用できる環境
VNCではなく RDP を選ぶ理由
Raspberry Pi OS ではリモート接続用に VNC サーバが提供されていますが、以下の理由で著者は RDPサーバである xrdp の利用をおすすめします。
- Windows のリモートデスクトップクライアントとネイティブ互換
追加のクライアントソフト無しで、Windows 標準アプリ「リモートデスクトップ接続」でそのままアクセス可能です。
- 描画の軽快さ
RDP プロトコルは画面差分のみを送信するため、低帯域環境でもレスポンスが良好です。
- クリップボード共有やリダイレクト機能
ファイル転送やクリップボード共有など、RDPの豊富な機能が利用できます。
- マルチセッション対応
ユーザーごとに独立したセッションを確立でき、同時接続も柔軟に管理可能です。
これらにより、Windows クライアントとの親和性とパフォーマンスの面では xrdp の利点が大きく、より快適なリモート操作環境を実現できます。
1. パッケージの更新・インストール
ターミナル(または SSH)で以下を実行し、パッケージリスト更新と必要ソフトをインストールします。
sudo apt update
sudo apt upgrade -y
sudo apt install -y enlightenment xrdp xserver-xorg-core \
xorgxrdp xserver-xorg-input-all dbus-x11
enlightenment
:デスクトップ環境本体xrdp
:RDP サーバxserver-xorg-*
:Xorg バックエンド+入力ドライバ
2. デスクトップセッションの設定
xrdp ではデフォルトで ~/.xsession
が呼ばれるため、これを利用して Enlightenment を起動します。
cd ~/
cat << 'EOF' > ~/.xsession
#!/bin/sh
# ソフトウェア合成エンジンを有効化
export E_COMP_ENGINE=sw
# セッション起動
exec dbus-launch --exit-with-session enlightenment_start
EOF
chmod +x ~/.xsession
解説
上記のコマンドでホームディレクトリに.xsessionファイルを作成し、enlightenmentの起動スクリプトを設定します。注意点は以下の通りです。
- ソフトウェア合成(sw):RDP 環境でハードウェア合成が正しく動作しない場合の対策
- dbus-launch:デスクトップに必要な D-Bus セッションバスを起動
3. xrdp サービスの有効化と確認
xrdpをインストールすれば、サービスが自動で有効化されるはずですが、念のため以下のコマンドで有効化します。
sudo systemctl enable xrdp
sudo systemctl start xrdp
その後、ステータスを確認します。active (running)
と表示されれば問題ありません。
sudo systemctl status xrdp
4. Windows からリモートデスクトップ接続
では、早速Windowsから接続してします。
- Windows の「リモート デスクトップ接続」を起動
- 「コンピューター」欄に Raspberry Pi の IP アドレスを入力
- 「接続」をクリックし、ユーザー名とパスワードを入力
成功すると、Enlightenment の洗練されたデスクトップが表示されます。

5. 起動直後のメモリ使用量比較
Windows から リモートデスクトップ接続した状態でターミナルを開き、free -h
コマンドを実行してメモリ使用量を比較しました。結果は以下の通りです。
デスクトップ環境 | 使用メモリ (Used) | 空きメモリ (Free) |
---|---|---|
Raspberry Pi OS (PIXEL) | 268MiB | 285MiB |
Enlightenment | 240MiB | 347MiB |
Enlightenment 環境では約28MiBの使用メモリ削減と約62MiBの空きメモリ増加が確認できました。思ったより差がないですね。
ただし、操作に対する反応はEnlightenmentの方が少し速い気がします。
トラブルシューティング
- マウスがウィンドウ上で動かない
インストール当初、マウスが反応せずかなり苦労しました。.xsession
にexport E_COMP_ENGINE=sw
を追加して解消しました。
- 画面が真っ黒、または表示崩れ
RDP クライアントを再起動して再接続してみてください。
- ログを確認したい
~/.xsession-errors
や/var/log/xrdp-sesman.log
をチェックしてください。
まとめ
Raspberry Pi OS で Enlightenment デスクトップ環境をリモートデスクトップから利用するには以下の手順が必要です。
- パッケージをインストール(
enlightenment
+xrdp
+ Xorg ドライバ) ~/.xsession
でソフト合成を有効化- xrdp サービスを起動・有効化
- Windows のリモートデスクトップ接続でアクセス
なお、著者のRaspberry Pi OS は少し古めのRaspbian GNU/Linux 10 (buster)ですが、最新版でも同じように設定できるはずです。
Enlightenment を導入すれば、標準デスクトップ環境より軽快な環境を構築できます。ぜひお試しください!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい Raspberry Pi (ラズベリーパイ)ライフを!