「できそうで、やりづらかったこと」を掘り起こせ!映像作家に学ぶ、エンジニアのための創造性の鍛え方

みなさん、こんにちは。

先日、以下の記事で「Tama Design University(TDU)」の講義シリーズ、「デザインという問い」 をご紹介しました。

年末年始など、少し時間に余裕があるときに視聴された方もいらっしゃるかもしれません。

私もYouTubeで公開されている講義の中から、映像作家・橋本麦さんの 「今更どう映像技法をひねり出すのか?」 という回を視聴したのですが、これがもう、エンジニアにとっても「刺さる」内容のオンパレードだったんです。

タイトルだけ見ると「映像の専門的な話かな?」と思うかもしれませんが、実はこれ、「成熟した技術の世界で、どうやって自分だけの価値(差分)を作るか」 という、普遍的な戦略の話でした。

 


 

技術が成熟した世界で、どう「差分」を作ったらいいのか?

 

映像の世界は、発明から130年ほど。すでに「やり尽くされた」感があり、純粋なテクノロジーの新しさは、今や生成AIやXRといった分野に移りつつあります。

これって、Web開発やシステム設計の世界でも同じことが言えませんか?

  • Webアプリケーション
  • 業務システムやクラウドインフラ
  • IoTデバイス

どの分野もフレームワークやベストプラクティスが整い、「正しく、効率よく作る」こと自体は誰にでもできる時代になりました。

そんな中、個人が「違い」を生み出すにはどうすればいいのか。橋本さんが提示した答えは、「できそうで、やりづらかった手法」をあえて掘り起こす という戦略でした。

 


 

あえて「非効率」なところに余白を見つける

 

橋本さんは、経済価値が低かったり、手間がかかりすぎたりして放置されてきた表現に注目します。

  • 3Dプリンターを「出力」ではなく「プロセス」として楽しむ
    削る・積むといった動きそのものをアニメーションにする
  • 膨大なデータを並べ替える
    14万字もあるユニコード文字を、AI(深層学習)を使って「見た目が似ている順」に並べ替え、パラパラ漫画のように動かす

これらは技術的に不可能ではありません。でも、「面倒だし、効率悪いよね」という理由で誰もやってこなかった。

エンジニアリングの世界でも全く同じですよね。

「丁寧にログを可視化すれば原因は見えそうだけど、工数がかかるからやらない」
「現場をじっくり観察すれば歪みがわかるけど、とりあえずフレームワークに乗せた方が早い」

こうした 「できなくはないが、やりづらいこと」。ここにこそ、実は本当の価値や個性が眠っているのです。

 


 

「ロジック」で縛り、「感覚」で遊ぶ

 

もう一つ面白かったのが、「計算論的思考(コンピュテーショナル・シンキング)」をアナログな制作に持ち込む アプローチです。

橋本さんは、アニメーションのタイムラインを単なる線ではなく、「有限オートマトン(状態機械)」 として捉え直しています。

たった44コマしかない魚の絵を、プログラム的な「状態遷移」でつなぐことで、生き物のように無限に泳ぎ続けさせる。これってまさに、私たちが日々コードで扱っている考え方そのものですよね。

ロジックというカチッとした骨組みを使いながら、手書きや粘土のような「身体的な気持ちよさ」を追求する。この理系と美術系の往復運動が、新しい表現を生むのだと実感させられました。

 


 

「成果報告文化」が創造性を削っている?

 

一方で、現実的な課題についても考えさせられました。多くの組織には「日報」や「週報」があり、「説明しやすい成果」が求められます。

そうなると、どうしても

  • すぐ成果が出る仕事
  • 依頼された分かりやすい仕事

ばかりを優先して、

  • うまくいくか分からない実験
  • 価値が後からついてくる試行錯誤

は後回しにされてしまいます。

効率や整理整頓を重視しすぎると、突破口となる「混沌(クリエイティブ・カオス)」が排除されてしまうのです。

 


 

小さく、まずは「記録」から始めてみる

 

「やりづらいこと」を掘り起こすチャンスは、準備している人にしか訪れません。とはいえ、いきなり仕事のやり方を変えるのは難しいですよね。

そこで、まずは 「成果を出す」のではなく、「試行錯誤を記録する」 ことから始めてみるのはいかがでしょうか。

  • 週に30分だけ、業務に関係ない技術を触る
  • 気づいた小さな違和感をメモに残す
  • その「過程」をブログやSNSに放り出してみる

生成AIが「効率」のパイを奪っていく今だからこそ、あえて「やりづらさ」に向き合う。そんな非効率な試行錯誤の積み重ねが、いつか強力な武器になってくれるかもしれませんよ。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、よいクリエイティビティを。

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