みなさん、こんにちは。
今回は、Windows 11をご利用のみなさんの中でも、特に業務用PCのセットアップに携わる方々にとって、非常に気になる、そして今後の運用に直結する話題を取り上げたいと思います。
それは、「Windows 11の初期設定(OOBE:Out-of-Box Experience)で、Microsoftアカウント(MSアカウント)を使わずにローカルアカウントを作成する方法の動向」についてです。
Microsoftによるローカルアカウント廃止への動き
最近、PC業界では、MicrosoftがWindows 11の初期設定プロセスから、ローカルアカウントを作成する機能を完全に排除しようとしている、というニュースが話題となっています。
ユーザーフォルダー名、改善の裏側
まず、米国時間2025年10月6日に公開されたWindows 11のInsider Program向けβビルドで、一つの大きな変更がありました。
それは、MSアカウントでサインインしても、任意の「ユーザーフォルダー名」を指定できるようになった点です。
これまで、MSアカウントでセットアップを進めると、メールアドレスの最初の5文字など、意図しない名前で「C:\Users\〜」のフォルダーが作成されてしまい、後から変更するのが手間でした。これが改善されたことは、非常に喜ばしいことです。
しかし、この改善こそが「ローカルアカウント廃止」の布石ではないかと考えられています。
なぜなら、これまでは「ローカルアカウントにすれば、任意のユーザーフォルダー名が作れる」というメリットがあったため、ローカルアカウントが残されていましたが、MSアカウントでも名前指定が可能になったことで、ローカルアカウントを削除する理由ができてしまったからです。
実際、今回のビルドではローカルアカウントの作成画面が消滅してしまいました。
MicrosoftがユーザーをMSアカウント利用へ誘導したいという意図は明らかであり、将来的にはローカルアカウント作成への導線を完全に断つ方針であることは、ほぼ間違いないようです。
参考: Windows 11 Insider Programで初期設定時に「任意のユーザーフォルダー名」を付ける“裏技”が登場 ローカルアカウントでのセットアップから卒業できるか?
現場からの悲鳴 – インターネットに接続できないPCの運用問題
この一連の動きは、特定のビジネス現場においては、深刻な問題を引き起こします。
特に、私たちのように医療システムなどを医療機関に納品することが多い人にとって、この変更は無視できない事態となります。
セキュリティ上、オフライン運用が必須のPC
医療機関などに納入するクライアントPCは、セキュリティポリシーや運用要件から、納品後はインターネットに接続しないことが一般的です。
そのため、納品するシステムを組み込むPCのセットアップ時には、以下のような手順を踏むことがほとんどです。
- 素のWindows 11がプリインストールされた市販のPCを選定・購入します。
- システムを組み込む前の初期設定で、必ずローカルアカウントを作成します。
- 納品後、インターネット接続なしでシステムを運用していただきます。
もし、初期設定でMSアカウントの作成が必須になってしまうと、ネット接続ができない環境でのセットアップが困難になり、後の管理や運用においても煩雑さが増してしまいます。
今回の変更が全てのPCに適用されてしまうと、今後ローカルアカウントの作成ができなくなり、業務に支障をきたすことになりかねないのです。
解決策 – 現時点で有効な「ローカルアカウント作成」の抜け道
「今後、初期設定でローカルアカウントは作れなくなってしまうのか?」とご不安に思われている方も多いかもしれませんが、今のところその心配は杞憂のようです。
現時点では、Windows 11の初期設定でMSアカウントの入力をスキップし、ローカルアカウントを作成する「抜け道」がまだ残っていることが確認されています。
Microsoftがこの抜け道をいつ塞ぐかは分かりませんが、今のうちにその具体的な方法を知っておくことは、今後のPCセットアップ作業において非常に重要です。
コマンドプロンプトを利用した設定スキップ方法
この方法は、Windowsの初期設定(OOBE)の途中で「裏技的なコマンド」を実行し、インターネット接続の要件を強制的に無効化させるというものです。
では実際の方法をみていきましょう。
ステップ 1: 国・地域の選択画面でコマンドプロンプトを起動する
Windows 11プリインストールPCの電源を入れると、最初に「国または地域」を選択する画面が表示されます。

この画面で、キーボードの
Shift+F10
を同時に押してください。
すると、背景に「コマンドプロンプト」の黒い画面が表示されます。

ステップ 2: ローカルアカウント有効化コマンドを実行し、再起動する
コマンドプロンプトが表示されたら、以下の2つのコマンドを、1行ずつ正確に入力して、Enterキーを押してください。
1行目:ローカルアカウント作成を許可するレジストリ設定
reg add HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\OOBE /v BypassNRO /t REG_DWORD /d 1 /f
(※ NRO は Network Required OOBE の略で、ネットワーク接続を強制する設定をバイパスするための設定です。)
2行目:PCを直ちに再起動
shutdown -r -t 0 -f
この2行目のコマンドを入力してEnterキーを押すと、PCはすぐに再起動されます。

◆ このコマンドが有効な理由
実はこのコマンドは、以前のWindowsの初期設定に含まれていた「ローカルアカウントを作成する画面を表示するためのバッチファイル」の中身だったようです。
最新のビルドではそのファイル自体は削除されましたが、コマンド自体はWindows内でまだ有効な状態として残っていた、というわけです。ただし、この情報が公知となった今、今後のビルドで塞がれてしまう可能性はあります。
ステップ 3: 再起動後、「インターネットに接続していません」を選択
PCが再起動されると、初期設定の続きが始まります。
しばらく進むと、「ネットワークに接続しましょう」という画面が表示されますが、ここで非常に重要な選択肢が表示されます。
「インターネットに接続していません」
このリンクを選択して、次に進んでください。

ステップ 4: ローカルアカウントを作成する
この選択肢を選んで進むと、Microsoftアカウントの入力が要求されず、ローカルアカウントの作成画面へと移行するはずです。
あとは、通常の初期設定と同様に、任意のユーザー名やパスワードを設定して再起動すれば、無事にローカルアカウントでサインインすることができます。
今後の見通しと代替案について
今回の「裏技」は、いつまで使えるか分かりません。Microsoft自体が、今後のアップデートでこの抜け道を塞いでくる可能性は高いでしょう。
また、大手メーカーの市販PCが、このコマンドの実行を許可しないような細工をしてくる可能性も考えられます。
もし、この方法が使えなくなった場合の代替案として、以下の選択肢を検討する必要があります。
- 別の回避策が発見されるのを待つ。
- 組み込み用のWindowsを採用するなど、MSアカウントを不要とする企業向けセットアップ方法を検討する。
まとめ
Microsoftが目指す方向性として、ローカルアカウントを廃止する流れは止められないかもしれません。しかし、インターネット接続ができない特殊な環境での運用や、組み込みシステムなど、ローカルアカウントが不可欠な現場があるのも事実です。
今回ご紹介したコマンドによる回避策は、私たち現場の人間にとって、現時点での重要な対処法となります。
今後も新しい情報が入り次第、みなさんにお届けしていきます。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、よいWindowsライフを!