みなさん、こんにちは。
今日は、一風変わったテーマでお話ししたいと思います。「マクドナルドのフライドポテト」と「日本のSIer」という、一見全く関係なさそうなこの二つに、実は深い繋がりがあるんです。
食レポ? ITの話?
ご安心ください。このブログ記事を読み終える頃には、きっとフライドポテトが食べたくなると同時に、日本のシステム開発の未来に希望が見えてくる、かもしれません。
なぜマクドナルドのポテトは世界中で同じ味なのか?
世界中どこのマクドナルドに行っても、フライドポテトって同じ味がしますよね? これはもはや「世界一再現性の高い食べ物」と言っても過言ではありません。でも、日本のシステム開発プロジェクトときたら毎回違う問題で炎上し、品質もバラバラ。まるで「日本のSIer七不思議」です。
「生成AIでコードを書けば、もっと均一なシステムができるはずなのに!」そう思いますよね? しかし、話はそう単純ではありません。この謎を解き明かす鍵は、マクドナルドの「完璧なレシピ」に隠されています。
マクドナルドの「標準化」の秘密
なぜ、誰が揚げても同じ味になるのか? その秘密は「徹底した標準化」にあります。
- ポテトの量
- 1バスケットあたり約738gです。
- 油の温度:
- 164℃です。家庭で天ぷらを揚げる時に「だいたいこのくらいかな~」なんてやっている私からすると、この厳密さには頭が下がります。
- 揚げ時間
- 「2分55秒」。1秒たりとも許されないタイマー命のルールです。
- 品種
- 「ラセット・バーバンク」。世界共通です。
重要なのは、この「プロセスの標準化」。つまり、「誰が作っても同じ味になる魔法のレシピ」があるからこそ、世界中で同じ品質が保たれているのです。この徹底ぶりは、システム開発でも大いに見習うべき点ですよね。
生成AIは日本のSIerの救世主?
2023年、ChatGPTの登場によって、コード生成が当たり前になりました。「これでついに属人化から解放される!」「やったー!SIerの救世主が現れた!」誰もがそう思いました。私も、正直、少しは楽ができると期待していました。
簡単なCRUD操作(データベースの作成・読み取り・更新・削除)なら、誰でも同じコードが書けます。まるで、料理初心者がレシピ通りに作ったら、そこそこの料理ができちゃった、という感覚です。
しかし、現実はどうでしょう? プロジェクトの炎上は減りましたか?
残念ながら、あまり減っていないどころか、新たな炎上案件が増えたような? AIは優秀なはずなのに、一体なぜでしょう。
AIに要件定義を任せるとどうなる?
「じゃあ、AIに要件定義を任せちゃえばいいんじゃないか? AIなら、ふわっとした要望も汲み取ってくれるはず!」そう考えた方もいるかもしれませんね。
ただし、実際の会議では、部長は「使いやすくして」、課長は「でも予算は抑えて」、現場は「今のやり方も残して」、IT部門は「セキュリティ重視で」、こんなカオスな状況です。誰しも心当たりがありますよね? マクドナルドで「お任せコースで!」と注文して、アルバイトを困惑させているようなものです。
AI議事録は忠実に記録します。「使いやすく、予算を抑え、現在の運用を維持し、セキュリティを重視したシステムを構築する。」
これ、本当に「要件」でしょうか?
AIは優秀ですが、あくまで入力された情報を処理するだけです。「使いやすく」の具体的な定義も、「予算を抑える」の上限も、何一つ具体性がありません。AIは「はい、承知いたしました!」とは言ってくれますが、心の中では「で、具体的に何?材料も予算も時間も分からないのにどうやって作れと?」と思っていることでしょう。
AIが教えてくれる「曖昧さの可視化」
マクドナルドのポテトには、75年間の顧客データと実験結果に基づいた「なぜ164℃なのか?」「なぜ2分55秒なのか?」という明確な理由、つまり完璧なレシピがあります。
一方、日本のSIerの要件は、「使いやすくとは何か?」「予算を抑えるとは何円か?」といった未定義の塊です。ひどい場合は、「とりあえず作ってから考えよう」なんてことも。まるで、冷蔵庫にあるもので適当に作って、後で「やっぱり中華がよかった」と言われるようなものです。
AIは正直者です。AIが「理解できません」と言ったら、それは私たち人間も理解できていないということなのです。AIは私たちに「あんたたち、本当にこれでいいと思ってるの?このレシピで本当に作るの?」と、優しく、しかし確実に問いかけているのです。AIは鏡なんです。しかも、正直すぎる鏡です!
日本のSIerに足りない「レシピ」
マクドナルドには「作る前に完璧な設計図」、すなわち「完成されたレシピ」があります。このレシピは75年かけて完成し、もう変更しません。「今日のポテト、気分で5分揚げてみるか!」なんてことをしたら、全世界からクレームが殺到することでしょう。
しかし、日本のSIerは… 「作りながら考える」 「途中で仕様変更」 「完成後に『やっぱり…』」
まるで、「味噌汁作ってって言ったのに、なんでとんこつラーメンが出てくるの?」というような状況です。
本当に重要な要件は「打ち合わせ」ではなく「現場の真実」にあります。そして、現場の真実は「違和感を感じる」ことからしかわかりません。この真実を、どれだけ詳細に、どれだけ具体的に言語化、つまり完璧な「レシピ」として落とし込めるか。それがSIerの生命線であり、そこができていないのが炎上の根本原因なのです。「感じる」ことができない生成AIでは、この部分は救えません。
結論 – AIは「新人料理人」
では、結論です! 生成AIは「優秀だけど融通の利かない新人料理人」だと思ってください。
レシピ通りの完璧な料理はできますが、旬を見極めてアレンジしたり、場の空気を読んだりすることは苦手です。「季節のおまかせコース」なんて料理はできません。言われた通りに、寸分違わず料理を作る「レシピ忠実型シェフ」なんです。
でも、それこそが価値なんです!
AIに「分からない」と言われることで、私たちは自分たちの曖昧さに気づけます。まるで、新人料理人が「シェフ、この『適当な塩加減で』ってどういうことですか?」と聞いてくれるようなものです。
「なぜそうするのか」までレシピ化できたとき、AIは最高の武器になります。AIは、日本のSIerにとって最高の「曖昧さ検出器」なんです!
「ここに曖昧な定義がありますよ~」とアラートを出してくれる、料理で言えば、計量カップやタイマー、あるいは経験豊富な味見係のような存在です。
最後に
次回、AIが「申し訳ございませんが、もう少し具体的に教えてください」と言ってきたら、怒らないでください。最高の笑顔で「ありがとう、君のおかげで問題が見えたよ」と言ってあげてください。
そして、マクドナルドのポテトのように、明確で、誰がやっても同じ結果が出るような「完璧な指示」、つまり「黄金のレシピ」を出せるよう、私たちが努力しましょう。
AIは「嘘つき」「ハルシネーション(幻覚)」が問題だと騒がれている部分もありますが、もしかしたら、私たちが思っているよりもずっと正直なのかもしれません。私たち人間も、AIを見習って正直になりましょう。
今日の記事でポテトが食べたくなった方、ぜひ今日はお酒のつまみにマクドナルドのおいしいポテトを食べましょう。このポテトが、良いシステム開発の「完璧なレシピ」を考えるヒントにきっとなってくれるでしょう。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、よいシステム開発を!