みなさん、こんにちは。
2025年5月10日に、株式会社Fusicさんのオープンオフィスで開催された「Serverless Meetup Fukuoka #5」に参加してきました。
今やServerlessシステムは、IoT開発において欠かせない存在になっていますよね?福岡のServerlessイベントということで、私も興味津々で参加しました。今回は、イベントの内容や雰囲気、学びについてご紹介したいと思います。
今回のイベントテーマは「Difyを使ってLINEチャットボットを作成するハンズオン」。最新のLLM(大規模言語モデル)を活用し、実際にチャットボットを構築するという実践的な内容でした。
Difyとは?
まず、本イベントの主役とも言える「Dify」について簡単に触れておきます。Difyは、複雑なAIワークフローをノーコードまたはローコードでビジュアルに構築できるプラットフォームです。具体的には以下のような用途に対応しています。
- チャットボット
- テキストジェネレーター
- エージェント(自律的に動作するAI)
GUIベースで直感的に設定できるのが大きな特徴で、技術に明るい人だけでなく、企画職やマーケティング担当者でもある程度扱える点が魅力です。
利用したLLMとそのアーキテクチャ
今回のハンズオンでは、Amazon Bedrock を使ってLLMを活用しました。Bedrockは、OpenAIやAnthropic(Claude)、AI21など、複数のAIモデルを透過的にAPIとして提供できるAWSのマネージドサービスです。
この仕組みを使って、「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」と呼ばれる検索拡張生成の手法を実装。以下のような構成でシステムが組まれていました。
- UI:LINEチャット形式で構築し、LINE Messaging APIを使用
- 質問解析と返答生成:Difyが担当。オンプレミスのEC2上にDockerでデプロイ
- LLM:Bedrock上のNova Liteモデルを使用。RAGにより制約付きで生成を行う
- データベース:MySQL互換のTiDBをナレッジデータベースとして活用
- APIテスト:POSTMANで動作確認
また、RAGの精度向上のために以下のAWSサービスも使用されていました。
- Amazon Titan Text Embeddings:テキストを高次元のベクトルへ変換
- Bedrock Reranker Model:関連性の高いデータを優先的に並び替える
ハンズオンの進行と所感
正直に言えば、このハンズオンは中級者以上向けの内容でした。
難易度と前提知識
運営からの丁寧なレクチャーやデモがある形式ではなく、参加者が自分で資料を見ながら黙々と構築を進めるスタイル。EC2のセットアップやIAMロール設定など、クラウドサーバ運用に関する基礎知識がある前提で進行します。AWSに不慣れな方にとっては、序盤でつまずく可能性が高いでしょう。
Dify特有のトラブル
私自身、Difyのワークフローセットアップで躓きました。本来はBedrockを使う構成のはずなのに、OpenAIのプラグイン設定を求めるエラーが発生。原因はDifyのバグで、テンプレートを使わずにワークフローを一から構築すれば回避できたとのこと。また、環境設定ファイル(.env
)の内容についても、資料通りに進めても想定通りに動かないケースがありました。
私の場合、当日はハンズオンの最後まで完遂できず、翌日に復習を兼ねてようやくやり遂げることができました。
イベント全体の雰囲気
ギーク向けコミュニティ感
このイベントの印象を一言で表すなら、「ギークコミュニティ的」です。運営は人手不足のためか余裕がなく、「とにかく時間内に構築を終わらせよう!」という進行。大手企業主催のイベントのような、ゆったりした雰囲気や交流の場の提供はほとんどありませんでした。あくまで技術を追求することが目的であり、「ついて来られる人だけがついて来てください」といったスタンスを感じました。
一方で、ある程度の技術力を持つ参加者にとっては、他の参加者との比較を通じて自分の技術的な立ち位置を確認できる貴重な機会にもなります。「自分ももっと技術を磨かなければ」という良い意味での焦りを得るには、絶好の場だと感じました。
LTセッション
本イベントにはLT(ライトニングトーク)セッションがありました。印象的だったところをまとめておきます。
Lambdaの課金体系変更
私も知らなかったAWS Lambdaの課金体系変更に関する話題です。
2025年8月から、オンデマンド実行時の初期化フェーズ(init)にも課金が発生するようになるそうです。これまで無課金だった初期化処理が、今後はコストに直結するため、コールドスタート対策が一層重要になります。
対応としては以下のような工夫が考えられるそうです。
- 初期化済みのスナップショットの活用
- コードの最適化
- CloudWatch Log Insightsでinit時間の把握
この変更は、Lambdaを活用しているプロジェクトには無視できない影響があるため、今のうちから設計や実装を見直しておく必要があるかもしれませんね。
サーバレスアーキテクチャへのこだわり
サーバレスといえども、アーキテクチャや設計は非常に重要です。LTでは、次のような考え方が共有されました。
- 抽象化された設計は開発工数が増えるが、保守性・安定性が向上する
- 初期の設計で技術的負債を抑えることが将来の品質に直結する
ただし、このアプローチが有効なのは、受託開発や大規模システムなど、安定運用が前提のプロジェクト。一方で、プロトタイピングやプロダクトの初期フェーズなど、素早い検証が求められる場面では、過度な設計重視はむしろマイナスになりかねません。TPOを見極めることが重要です。
まとめ
Serverless Meetup Fukuoka #5は、実際に手を動かしながら最新のLLMとサーバレス技術を組み合わせたチャットボット構築を学ぶ、非常に刺激的なイベントでした。ただし、前提知識のハードルは高く、初心者が気軽に参加するにはやや敷居が高い印象でした。
とはいえ、今後本格的にAIやサーバレス技術に取り組みたいと考えているエンジニアにとっては、自分の技術を試し、磨く場として非常に有意義だと感じました。
参加する際は、事前にAWSやDifyの基本的な使い方を予習しておくと、よりスムーズにイベントを楽しめると思います。興味のある方は、次回の開催に備えて準備を進めてみてはいかがでしょうか?
以上、私が感じたイベントの印象でした。もしお気づきの点があったらコメントを残していただけると嬉しいです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい技術者ライフを!