みなさん、こんにちは。
前回はHaiku OSの環境構築のまとめ記事をお届けしました。今回は「Haiku OS上でどう開発するか」という、いわば開発環境・AIエージェント活用編の記事をお届けします。
エディタ探しに始まり、Java・Node-RED・.NETといった開発環境の構築、そしてGemini CLIやGitHub Copilotといった最新のAIエージェントをHaiku OSに引き込む挑戦まで、振り返ってみるとかなり密度の濃い旅路でした。ぜひ最後までお付き合いください。
1. Haiku OSでVS Code?CodePositiveを試してみた
まず気になるのは、普段使い慣れたエディタがHaikuで使えるのか、という点ですよね。
Haikuの公式フォーラムでPoCとして紹介されていたCodePositiveというプロジェクトを発見し、VSCodium Web版と組み合わせて動かしてみた記事です。nodejs20やCMakeなどの依存パッケージを揃えてビルドし、VSCodiumのWebサーバーにCodePositiveから接続することで、VS CodeのUIをHaikuのネイティブアプリのように表示することに成功しました。
ただし、ローカルファイルへのアクセスができない、動作が不安定といった課題も残り、あくまで「表示できた」というPoC止まりという結果に。それでも、Haiku上の開発環境が少しずつ充実していく可能性を感じさせる、記念すべき一歩でした。
2. Haiku OSでJava開発環境をゼロから構築!OpenJDKとMavenの導入ガイド
続いては、王道の開発言語であるJavaの環境構築です。
HaikuDepotからopenjdk19などをインストールするところまでは簡単ですが、ビルドツールのMavenはHaikuDepotに存在しないため、Apache Maven公式サイトのバイナリを直接展開し、~/config/settings/profileでJAVA_HOMEやPATHを設定するという手順を紹介しました。
さらに実際にビルドする際には、以下のような「Haikuあるある」のハマりどころも共有しています。
- MavenがOSを認識できずエラーになる → mvn -DfailOnUnknownOS=falseで回避
- GPGチェックで弾かれる → mvn -Dgpg.skipで回避
こうした細かなオプション一つひとつが、Haiku OSでの開発の「型」を作っていく地道な作業でした。
3. Haiku OSにNode-REDをインストールしてIoT端末としての可能性を広げる!
IoT視点でHaikuを見たとき、外せないのがビジュアルプログラミングツールのNode-REDです。
ここで重要になるのが、Haiku OSならではの設計思想です。
- sudoが存在しないシングルユーザーシステムであること
- /boot/system以下が読み取り専用で保護されていること
この2点を踏まえ、npm config set prefixでグローバルインストール先をユーザー領域(/boot/home/config/non-packaged/npm-global)に変更し、PATHを通してからnpm install -g node-redを実行するという手順を確立しました。この「書き込み可能な場所にインストール先を逃がす」という発想は、後述のGemini CLI導入でも再び登場する、Haiku OS開発の基本パターンです。
4. Haiku OSで.NET、いける? ― 挑戦とリベンジの二部作
個人的に一番ドラマチックだったのが、この.NET環境構築シリーズです。前後編で結果が真逆になっているので、あわせて読むと面白さが倍増します。
第一弾では、trungnt2910/dotnet-buildsというプロジェクトの存在を発見し、Haiku OSのリポジトリをnightlyビルドに切り替えたうえで.NETランタイムのインストールに成功。しかし、カスタムNuGetソースの追加は「nugetコマンドが見つからない」エラーで失敗し、定番のHello Worldプログラムのビルドもエラーで通らず、「ランタイムは動くが、開発環境としてはまだ実用に至らない」という悔しい結果で幕を閉じました。
それから時が経ち、最新のナイトリービルド(hrev59677)で再挑戦したのが第二弾です。第二弾ではあえて安定志向で.NET 8をターゲットに固定(インストールスクリプトのCHANNEL変数を書き換え)し、GitHubのパーソナルアクセストークンを使ってカスタムNuGetソースの追加にも成功。そしてついに、
dotnet new console
dotnet run
で「hello world」の出力に成功します。前回の無念を晴らす、シリーズ屈指の感動回でした。
5. Haiku OSでAIによるコード支援を! Gemini CLIを導入してみた
開発環境が整ってきたところで、いよいよAI活用の話に入っていきます。まず挑戦したのはGoogleのGemini CLIです。
Haiku OSにはVS CodeもGitHub CLIも存在しないため、消去法的に浮上したのがGemini CLIでした。Node-REDのときと同様、npmのインストール先をユーザー領域に変更するところから始め、認証時にブラウザが自動で開かない問題はgemini –debugのデバッグモードで回避。認証用リンクを標準ブラウザのWebPositiveで開くことで、無事Google認証を完了させました。
対話モードで「Pythonでhello worldを表示するプログラムを作って」と指示すると、ちゃんとコードを生成してファイルに書き込んでくれることを確認。IDEの選択肢が乏しいHaiku OSにおいて、ターミナルベースでAIの力を借りられるようになったのは大きな一歩でした(なお2026年5月にGemini CLI自体はサービス終了となり、後継のAntigravity CLIへの移行が発表されています)。
6. Haiku OSでGitHub Copilot CLIを動かすまでの実録 ― 暗号化バグとTelnet + expect
Gemini CLIの無料枠に物足りなさを感じ、普段使いのGitHub Copilot CLIをどうしてもHaikuで使いたい……そんな執念から生まれたのがこの記事です。
Copilot CLIはNode.js 22以降を要求しますが、Haiku OSはNode.js 20までしか対応していません。そこで発想を転換し、「Linux(WSL)側でCopilot CLIを動かし、そこからHaikuへリモート接続する」という作戦に切り替えます。
定石のSSHを試すも、2026年5月当時のナイトリービルドに潜む暗号化系の認証バグにより接続不可。万策尽きたところで白羽の矢が立ったのが、まさかのTelnetでした。LAN内限定という条件下では、暗号化なしのシンプルさがむしろメリットに転じたのです。さらに、パスワードをAIに直接渡さないようexpectで自動ログインスクリプトをカプセル化し、Copilot CLI側にカスタムコマンドとして登録することで、「haikuに接続して」の一言でHaikuのシェルを操作できる環境が完成しました。
7. Haiku OS × GitHub Copilot 移植実録 ― 動画管理アプリを数十分でHaikuへ
TelnetとexpectでAIとHaikuの橋渡しができたなら、次にやることは一つ。「アプリがなければ、自分で移植してしまえばいい」です。
題材に選んだのは、Bodhi Linuxでも紹介したQt/C++製の動画管理アプリ「SceneExplorer」。以前ソロで挑戦して挫折していたこの移植作業に、今度はGitHub Copilotを相棒に再挑戦しました。
Copilotと一緒に乗り越えたのは、Linux固有拡張に起因する典型的な移植エラーの数々です。
- secure_getenv未定義 → Haikuでは標準のgetenvに分岐
- qmakeの.proファイルでlinux { … }スコープが原因のリンカエラー → linux|haiku { … }に修正
- sys/syscall.hが存在しない → #ifdef __linux__でガード
- struct direntにd_typeがない → stat()とS_ISDIR()によるPOSIX準拠の判定に置き換え
これらを次々と解決し、数十分でビルドを成功させ、Deskbarのメニューにも登録。エラーログの解析が面倒で挫折していた作業が、AIの力でここまで短縮されたことに、私自身「AIが変える移植と保守の未来」を強く実感しました。
Haiku OSはAI時代にこそ面白い
こうして振り返ると、Haiku OS開発環境の歴史は、「まずエディタとメジャー言語を動かす」→「IoTツールを載せる」→「.NETという高い壁に挑んでは跳ね返され、それでも再挑戦して掴み取る」→「AIエージェントを引き込み、開発そのものを加速させる」という、着実なステップアップの記録でした。
特に印象的なのは、Node-REDやGemini CLIの導入で確立した「ユーザー領域にインストール先を逃がす」という基本パターンが、後のあらゆる記事で応用されている点です。そして終盤のCopilot CLI・SceneExplorer移植の2本では、AIエージェントがHaiku OSのようなマイナー環境の開発効率を劇的に変える可能性を、身をもって示してくれました。
マイナーOSだからこそ、有志のツールとAIの力を借りて道を切り拓く楽しさがある。Haiku OSでの開発に興味を持った方は、ぜひ今回の記事群を参考に、自分だけの開発環境を組み立ててみてください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいHaiku OSライフを!
環境構築編はこちら↓



