みなさん、こんにちは。
最近、ものづくりの本質について深く考える機会がありました。
世の中にあるものづくりには、大きく分けて二つの流儀があると思っています。
- 作品として作るものづくり(自分の内側から始まる)
- 製品として作るものづくり(市場など外側のニーズから始まる)
この二つは、似ているようでまったく違います。 ただ、面白いことに歴史を振り返ってみると、大ヒットする製品は例外なく強烈な「作品性」を帯びているんですよね。
先日、このテーマを象徴する出来事を、偶然にもインターネットで立て続けに目にする機会がありました。
バラバラに見えるこの3つの点が、私の頭の中で一本の線に繋がり、「作品性の強い製品が跳ねる条件」がくっきりと浮かび上がってきたのです。
shi3z氏の映像編集 ― 素材から物語を発掘する「作品づくり」
shi3z氏のnoteを読むと、彼のドキュメンタリー編集の手法はまさに「作品づくり」そのものでした。
驚いたのは、彼がラッシュビュー(素材確認)とテロップ入れを同時に行っていたという点です。
一般的な編集では、「テロップ入れ」は「仕上げ」工程です。ストーリーができあがった後に伝わりづらい場面の補足として挿入する。しかし彼のテロップ入れは仕上げ工程ではありませんでした。素材の意味を読み解くためのテロップ入れだったのです。
- 聞き取れない言葉を補う
- 文脈を再構築する
- 当事者としての体験を再編集する
つまり、テロップを入れる行為自体が、素材の奥にある構造を掘り起こす作業になっていたのです。
ジブリの宮崎駿監督が脚本を作らず、絵コンテを描きながら物語を発見していくように、shi3z氏も素材と格闘しながら物語を発見していた。これは完全に「作品」の作り方でした。
大平貴之氏のプラネタリウム ― 作品性と製品性の間で揺れる宿命
プラネタリウム「MEGASTAR」の開発者である大平氏は、Xのポストで「自分は製品づくりをしている」と語っています。しかし、その言葉の裏には、表現者としての深い葛藤が垣間見えます。
肉眼で見える星だけの投影を求められれば、割り切ってそれを作る。 すると今度は「あなたのポリシーはどこへ行ったんだ?」と言われてしまう。
製品(市場の要望)と作品(個人のこだわり)の境界線が曖昧なまま20年続いてきたからこそ、時に誤解や衝突が生まれたといいます。
これは、作品性の強い製品が必ず抱える宿命でもあります。作者の世界観が強烈であればあるほど、市場の分かりやすいニーズとズレる瞬間がどうしても出てきてしまうのです。
かわんご氏のPOPOPO ― 作品として成功し、製品として失敗した理由
先日サービス終了が発表された、かわんご氏の「POPOPO」。彼はこのプロダクトを、完全に「作品」のスタンスで作っていました。
- 自動カメラがもたらす「生理的な気持ちよさ」
- 長く使い続けて初めてじわじわと分かる価値
- かつてのニコニコ動画と同じような「中毒性の発見」
- あくまで作者の世界観(内側)から始まる設計
「作品」としての完成度や思想は、間違いなく正しかったのだと思います。しかし、プロダクトが普及していく瞬間には「製品の論理」が必要不可欠になります。
- 初見でパッと価値が伝わること
- 使う前に「これ、良さそう!」と魅力が伝わること
- 口コミが自然に広がっていくこと
残念ながら、POPOPOはここが弱かった。かわんご氏が自ら「ゲームに負けた」と語ったのは、この「作品性」と「製品性」のギャップを最後まで埋めきれなかったという、冷静な自己分析だったのではないでしょうか。
作品性の強い製品が「跳ねる」5つの条件
では、歴史に名を残すような「作品性の強い製品」はいったいどうやって跳ねたのでしょうか? そこには明確な構造があるように思えます。キーワードは「伝わる仕組み」です。
1. 作品性 × 製品性のハイブリッド化
作者の尖った世界観(作品性)の周りを、初見で分かる使いやすさや価値(製品性)で包み込む。この二段階構造が絶対に必要です。
2. 初見で価値が伝わる「1秒の魅力」
ヒット作には、一瞬で脳をハックする分かりやすい魅力があります。
- ニコニコ動画:画面をコメントが流れる
- iPhone:指で画面がヌルヌル動く
- Tesla:踏んだ瞬間の強烈な加速
- MEGASTAR:圧倒的な星の数 (※POPOPOには、この「1秒のフック」が足りなかったのかもしれません)
3. 熱狂する初期ユーザー
コアな世界観を理解し、最初の「100人」が狂信的に愛してくれるコミュニティが生まれるかどうか。
4. 価値の「言語化」
難解な世界観がキャッチーに言語化されることで、ユーザーは「自分もその世界観の参加者だ」と感じられるようになります。
5. 口コミの起点
作品性は「熱狂」を生み、製品性は「理解」を生みます。広く普及していくためには、この両輪が揃って初めて口コミが爆発します。
世界観が伝わった瞬間に、製品は跳ねる
shi3z氏の映像、大平貴之氏のMEGASTAR、かわんご氏のPOPOPO。
そして、スティーブ・ジョブズの iPhone、岩田聡氏の ニンテンドーWii、盛田昭夫氏の ウォークマン。
これらはすべて、作者の強い内発的動機から生まれた「作品性の強い製品」です。売れる製品には、例外なく作者の魂(世界観)が宿っています。
ただし、どれだけ素晴らしい作品性を持っていても、それ単体では世の中に広がっていきません。大事なのは、その世界観が他者に伝わる「製品としての構造」をデザインできているかどうか。
作品は一人で作れますが、作品性の強い製品は「伝わる仕組み」を実装できたときに初めて、世界をひっくり返す。
この視点を持ってものづくりに向き合うと、プロダクトの設計や届け方がガラリと変わることに気づきました。
私自身、これまで振り返るとこの視点が漏れがちだったなと反省しています。強すぎるこだわりをどうやって「1秒の魅力」に翻訳するか。この学びを、これからの製品開発にしっかり活かしていきたいと思います。
「自分も何か作ってみたい」と思われた方、そのアイデア、頭の中で寝かせておくのはもったいないかもしれません。
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気になることがあればお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい製品開発を!



