みなさん、こんにちは。
先日、ITmediaで LayerX さんの「月30万円かかるAI社員」という記事を読みました。
AIが自分の業務ログを読み込み、改善案を出し、次の行動に反映していく──いわゆる“自己改善ループ”を回すという、とても興味深い取り組みです。
この記事を読んで、疑問が浮かびました。
なぜ LayerX のAIは一人当たり月30万円もトークン代がかかるのに、自分が普段使っているAIの費用はそこまで高騰しないんだろう?
掘り下げてみると、AIの本質的な得意・不得意と「自律型AIの正しい使いどころ」が見えてきました。
今回はその考察を共有したいと思います。
AIが高額になる理由は「発散問題」に使っているから
私がたどり着いた結論は、LayerX さんのAIが一人当たり月30万円もかかっている理由は、「発散問題」にAIを使っているから、です。
発散問題は、トークン消費が爆発する構造になっています。
もともとAIは、正解やゴールがひとつに絞られる「収束する問題」が大得意です。
- 経理の定型処理
- 契約書の自動分類
- バッチ処理の最適化
- エラー率の低減
条件が明確で確率が収束していくタスクなら、AIは少ないトークン数で安定して働いてくれます。
しかし、LayerX さんが挑戦している「AI社員の自己改善ループ」は、実は「発散問題」に分類されるものです。
そもそも「発散問題」ってなに?
発散問題とは、次のような性質を持っている領域のことです。
- 正解が複数存在する
- 評価基準が曖昧
- 文脈や現場の価値観に依存する
- 未来予測や人間の判断が必要
要するに、「何が本当に正しいのか」という前提そのものを決めるのが難しい領域のことですね。
このタイプの発散問題にAIを投入すると、AIは必死に解を探そうとしてこんな動きをしてしまいます。
- 多数の候補案をどんどん生成する
- それらを比較・検証しまくる
- 推論を何度も何度も繰り返す
- ひたすら改善案を出し直す
- 膨大なログを何度も読み直す
その結果、推論回数が爆発的に増え、トークン消費が跳ね上がってしまうのです。月30万円という金額は、まさにこの構造が生み出した「副作用」だと考えると合点が行きます。
発散問題でAI同士の改善ループを回すと「永遠に迷走する」
発散問題では「どちらの方向が正解か」が決まらないため、AI同士で自己改善ループを回すと、こんな状態に陥ってしまいます。
- 出してくる改善案が毎回ブレる
- ループがいつまでも収束しない
- 悪い意味で「永遠に改善(迷走)し続ける」
- その間もトークンを消費し続ける
一見すると「全然学習してくれない社員」に見えてしまいますが、これはAIの能力不足というより構造上の問題です。 AIは自ら目的や価値観を生み出すことはできません。だからこそ、発散問題の中では改善の方向性がグラグラと揺れ続けてしまうんですね。
一方、私のAI利用が格安な理由は「収束問題 + 個人の能力拡張」だから
私自身の日常的なAIの使い方は、ほとんどが次のようなものです。
- 技術的な文章の生成や推敲
- コードの記述補助やレビュー
- リサーチ・調査の高速化
- 思考の整理・アイデア出し
ここでは、AIを放任するのではなく、「人間の意志決定をサポート・強化する道具」として使っています。
目的や評価基準といった「発散しやすい要素」は人間がコントロールし、絞り込み(収束)の作業だけをAIに任せるスタイルです。
例えば、アプリ開発でも「目的や仕様」を人間側で明確に言語化してから投げかけるため、AIが無駄な推論を繰り返さず、トークン消費を低く抑えられています。
大切なのは「使いどころ」を誤らないこと
では、AIはすべて「人間の補助」に徹するべきなのでしょうか? いいえ、決してそんなことはありません。
「収束問題」の領域であれば、自律型AIや自己改善ループはどんどん活用すべきです。明確なルールや評価関数が存在するタスクなら、AIが自律的に試行錯誤を繰り返して最適解を導き出す価値は非常に大きいからです。
今回の考察で辿り着いた結論は、これです。
AIの真価を発揮させるには、「自律」と「補助」の使いどころ(配置)を誤らないことが重要。
1. 収束問題(ゴールが明確なタスク)
⇒ 「自律型AI」 をどんどん回して自動化・最適化する!
2. 発散問題(正解がない・文脈依存のタスク)
⇒ AIに丸投げせず、「人間+補助型AI」 で意志決定を加速させる!
発散問題に自律型AIを投げ込んでしまうと、迷走してコストが爆発してしまいます。逆に、AIを正しく「使いどころ」に合わせて配置してあげれば、無駄なトークン消費を抑えつつ、最大の成果を引き出すことができます。
「最近AIのコストが高いな…」「自律型AIがうまく機能しないな…」と感じている方は、ぜひそのタスクが「収束問題」なのか「発散問題」なのかを一度確認してみると、思わぬ発見があるかもしれませんよ!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よい生成AIライフを!
「うちの会社でも発散問題にAIを使っていないだろうか?」と気になった方はいませんか。
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