みなさん、こんにちは。
先日、公益財団法人 飯塚研究開発機構が主催する「令和8年度デジタルカイゼンセミナー」に参加してきました。会場は福岡市博多区の福岡県中小企業振興センター。当日は大雨予報でしたが、幸い、開催時刻の会場周辺は通常の雨程度で、登壇者も参加者も安堵されていたのではないでしょうか。各企業の担当者から多角的な視点でDX(デジタルトランスフォーメーション)の「現在地」と「これから進むべき道」が熱く語られました。
今回の登壇企業はトヨタ自動車九州さんや株式会社ターレット工作所さん、ソフトバンクさんといった企業で、話題の中心は製造業DXだったように感じます。しかし、ふと会場を見渡してみると、製造業だけでなく福祉事業者や医療関係といったサービス業の方々もたくさん参加されていたのが非常に印象的でした。今や「DX」という言葉は、業種や職種を問わず、あらゆる現場にとって切実で、かつ関心の高いテーマになっているのだと改めて実感させられました。
そこで今回は、デジタルカイゼンセミナーで見えてきた「多くの企業が直面するDXに関する共通の課題」と「今後の方向性」、そして特に医療や介護といったサービス業の視点に立ったときの「最初の一歩」の踏み出し方について、外部専門家を賢く活用する方法も交えながら、まとめてお届けします!
セミナーで見えたDXを阻む「2つの壁」
今回の登壇各社の素晴らしい取り組みや、質疑応答で飛び交った生の声を聞いていると、DXをスムーズに進める上で立ちはだかる課題は、大きく次の2つに集約されることが見えてきました。
1. 「点の改善」で終わってしまい、全体に広がらない壁
現場の困りごとを解決しようとするとき、最初は「紙の書類をデータ化する」「特定の転記作業を自動化する」といった、身近なところからのスタートになりますよね。これは「点の活動」として非常に素晴らしい一歩です。
しかし、実はここに落とし穴があります。それぞれの部署や担当者がバラバラにデジタル化を進めてしまうと、システム同士が繋がらず、情報がそこかしこに分散してしまうのです。結果として、「現場の一部は楽になったようだけれど、会社全体としての効果(面への展開)がさっぱり見えてこない」という状態に陥りやすくなります。点から面へとどうやって広げていくか、これが最初の大きな壁です。
2. 現場への「落とし込み」と「変化へのリスク」に対する不安の壁
セミナー後半の質疑応答では、社会福祉法人の参加者の方から「新しいデジタルツールを現場に導入する際、どのようなプロセスを踏めばいいのか」「うまく進まなかったときのリスク管理や、現場の負担をどう抑えるべきか」という、非常に切実な質問が出されました。
特に人と人との関わりが中心となるサービス業の現場では、「デジタル化によって今までの丁寧なサービスの環境が変わってしまうのではないか」という心理的な反発が起きがちです。さらに、導入したスマートフォンやタブレット、センサーといった各種デバイスが「もし故障したら誰が対応するの?」「業務が止まってしまうのでは?」という運用・保守面での不安も、一歩を踏み出す足かせになっています。
企業がDXに取り組む際の「3つの方向性」
こうした高い壁を突破するために、セミナーでは先進企業から非常に示唆に富む「3つの方向性」が示されました。どれも今すぐ参考にしたいものばかりです。
方向性① 「道具としてのデジタル」を全員で使い倒す
DXと聞くと、「何千万円もする高価なシステムを導入しなければならない」と思う企業担当者の方も多いと思います。
この点、トヨタ自動車九州さんのアプローチは真逆でした。高価なシステムを入れる前に、まずは1.5万円程度で手に入る小型コンピューター「ラズベリーパイ(Raspberry Pi)」や、1個300円程度の距離センサーといった安価な道具を活用しているそうです。
大切なのは、現場で働くスタッフ自らが「これを使ったらもっと楽になるんじゃないか?」と創意工夫を凝らし、自分たちの手で改善していく文化を育てることです。ソフトバンクさんも「1人100個のAIエージェント作成」という全社的キャンペーンを実施されたそうです。この施策もまさに同じ目的ですね。まずは「難しく考えずに触ってみる」「失敗してもいいから使ってみる」ことで、デジタルに対する心理的障壁を徹底的に下げることが何よりの近道です。
方向性② – BPR(業務再設計)をセットで行う
デジタル化を進める上で絶対に避けたいのが、「今やっている面倒な作業を、そのままデジタルに置き換えるだけ」というパターンです。これでは業務の本質的な効率化には繋がりません。重要なのは、デジタル化のタイミングで「そもそも、この作業って本当に必要なんだっけ?」という根本的な問い直しを行うこと、すなわちBPR(業務再設計)をセットで行うことです。
現場はどうしても目の前の作業に集中しがちなため、全体像が見えている管理職やリーダーがしっかりと関与する必要があります。現場から上がってきた個別の小さな改善を、会社や施設全体としての「理想の業務プロセス」へと綺麗に繋ぎ合わせる力が、今まさに求められています。
方向性③ – 生成AIを「自分専属のエンジニア」として活用する
「デジタル化や自動化をしたいけれど、社内にプログラミングができる人がいない」という問題は、今や過去のものになりつつあります。現在は生成AIの進化によって、この壁がほぼ完全に解消されました。
AIと普段通りの言葉で対話するだけで、わずか数分で必要なコードやシステムが生成され、それを現場で即座に試して検証する、というハイスピードな開発スタイルが可能になっています。プログラミングの知識がなくても、アイデアさえあればその日のうちに形にできる時代が来ているのです。これを活用しない手はありませんよね!
サービス業では「何をセンシングするか」から考えよう
今回のセミナーは製造業の事例がベースになっていましたが、これを医療や介護、福祉といったサービス業に当てはめて考えるときは、さらに一歩踏み込んだ視点を持つ必要があります。それが、「何をセンシング(計測・データ化)すべきか」という視点です。
- 製造業のセンシング → 機械や設備、モノ(工場の稼働率、温度、湿度、製品の寸法など)など比較的センシング対象をイメージしやすい
- サービス業のセンシング → 「人」(利用者様、患者様、そして現場で働くスタッフ)なので何をセンシングするのかイメージしにくい
サービス業、とりわけ医療・介護分野のDXを考える場合、何をデータとして捉えるべきかは重要です。例えば次のようなポイントが挙げられるでしょう。
- ベッドからの離床や、転倒・転落の予兆を事前に察知することはできないか?
- スタッフの施設内での動線や配置に、無駄な往復や偏りはないか?
- 体温や血圧、脈拍といったバイタルデータの測定・記録を自動化して、手書きの手間を無くせないか?
このように、「現場のどの動きを、どんなセンサーで捉えれば、ケアの質向上とスタッフの負担軽減を同時に達成できるのか」という具体的な設計図を描くことこそが、サービス業におけるDXの成否を左右します。
しかし、今回のセミナーでも各社から異口同音に語られていたように、この「どの課題に、何の技術をどう繋ぐか」というアイデアを出し、具体的な形にする部分こそが、現場が最も頭を抱え、苦労するポイントでもあります。
外部の力を借りるなら?「伴走支援」の賢い選び方・活用法
「エンジニアもいないし、何から手をつけたらいいのか本当に迷ってしまう…」そんなときは、すべてを自社で完結することを諦めて、外部の伴走支援者を頼るのが非常に賢い選択だと思います。ただし、単にシステムを「買わせる」だけの業者を選んでしまっては元も子もありません。外部のパートナーを選ぶ際は、ぜひ以下の3つの役割を期待できる相手を探してみてください。
1. 「何をセンシングすべきか」という最初の相談から乗ってくれること
まずは「現場のこの悩みを解決するには、どのセンサーをどこに配置するのが最適か」という、一番最初のセンサー選定や設計の段階から一緒に考えてくれるパートナーが必要です。さらに、実際の現場への取り付け、物理的な配線、安定したネットワーク構築といった、いわゆる「手と体を動かすフィジカルな作業」までしっかりと代行・サポートしてくれるかどうかが極めて重要になります。
2. 現場の「点」を、経営の「面」の戦略へと昇華させてくれること
現場から出てくる小さな「ここを直したい」という声(点)を大切にしつつも、それを施設全体・企業全体の効率化や、サービスの質の向上、経営指標の改善(面)へと綺麗に紐付けてくれるアドバイザーとしての役割を求めましょう。これによって、「せっかくお金と時間をかけたのに、部分最適だけで終わってしまった」という罠を確実に回避することができます。
3. 現場と一緒に「泥臭く汗を流して」支援してくれること
トヨタ自動車九州さんには「TQM(総合的品質管理)推進室」という組織があり、現場でトラブルが起きればすぐに駆けつけ、現場が自走できるようになるまで徹底的に伴走するそうです。これこそが支援のあるべき姿です。きれいな資料やマニュアルを配って終わり、一過性の講演をして終わり、というコンサルタントではなく、トラブルが発生したときに一緒に現場で知恵を絞り、スタッフの皆さんの気持ちに寄り添って泥臭く汗を流してくれる仲間のようなパートナーを選んでください。
一人で悩まず、まずは仲間を見つけましょう!
今回のデジタルカイゼンセミナーを通じて、何度も繰り返し強調されていた最も大切なメッセージは、「1人ではやらない、必ず仲間を見つけること」でした。医療・介護・福祉、そして製造業。扱っているモノや業種は違えど、現場を良くしたいという想いや、試行錯誤しながら進んでいくDXのプロセスはまったく同じです。
まずは社内で仲間を増やすことから始めましょう。近隣の企業同士で勉強会を開催するのも一つの手です。どの企業も困っている根本の部分は同じですので。
そして、どうしても社内で解決できない問題に直面した場合、専門家の力を借りましょう。その方が試行錯誤の回数を減らすことができて効率的です。
「ビューローみかみ」では、特に医療・介護・福祉分野のDXにおいて、「現場の何をセンシングし、どうやって日々の業務に落とし込んでいくか」という初期のアイデア出しの段階から、配線や設置といった物理的な実装、そして現場の皆さんが安心して使いこなせるようになる運用の定着まで、一貫して現場に寄り添い、全力で伴走できる強みを持っています。
「本当に初歩的なことから聞いてみたい」「どこから手をつければいいのか一緒に考えてほしい」という段階でも、全く問題ありません。まずは頭の中を整理するための「壁打ち相手」として、どうぞお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、よいDXライフを!



