なぜ「Linuxデスクトップ10%」が起きたのか、そして上昇傾向は続くのか? ― Windows市場構造・OEMインセンティブ・Chromebook時代のPC業界を総合的に読み解く

みなさん、こんにちは。

2025年中盤から2026年にかけて、StatCounterのデータにより「Linuxデスクトップの米国シェアが10%を突破した」というニュースが業界で話題になりました。

参考:デスクトップ向け「Linux」、市場シェアが10%を突破–1年でほぼ倍増(ZENET Japan)

ただし、この「10%」という数字は主に北米(米国)市場におけるデータです。グローバル全体では約7.5%前後、日本国内に至っては約5%前後にとどまっています。

とはいえ、シェアが倍増したこと自体は事実。ですが、この数字をそのまま「Linuxが一般ユーザーに普及しはじめたサインだ!」と解釈するのは、かなり早計だと私は考えています。

今回は、Linuxシェア増加の理由を総合的に整理して、PC業界の裏側から読み解いてみたいと思います。


Linuxシェア10%は「一般ユーザーの移行」なのか?

前述の記事などでは「Windows 11の商業化や広告に嫌気が差したユーザーがLinuxに移行した」といった主張も見られます。しかし、私自身はシェア上昇の主因は以下の5つだと考えています。

  1. Windows 10 世代の PC の延命需要
    これが最大の理由でしょう。Windows 11の厳格なハードウェア要件(TPM 2.0やCPU世代)により、2015〜2018年製のPCが大量に切り捨てられました。しかし、Webブラウジングや事務作業なら性能はまだ十分。半導体不足によるPC価格高騰によって新しいPCを買う予算がない層が、軽量なLinuxを入れて延命するという選択を取っていると考えられます。
  2. SteamDeckなどLinuxゲームコンソールの普及
    SteamDeckは標準でArch Linuxベースの「SteamOS」を搭載しています。ブラウザを開くとLinuxデスクトップとして計測されるため、北米で数百万台規模で普及したことが、Linuxアクセスの底上げ要因になっていそうです。
  3. 中古PC市場でのLinux化
    米国でも日本でも、中古PC+Linux の組み合わせが学生や開発者に一定の人気があります。Windows 11非対応PCは対応PCに比べて価格が非常に安く、中古ショップがLinuxをプリインストールして再販するケースも増えています。
  4. 技術者・学生の Linux 移行
    クラウド、AI、コンテナ技術など、現代の開発環境はLinuxが前提です。ITエンジニアを目指す学生や若手技術者が、ネイティブな開発環境としてWindowsではなくLinuxに流れるのは自然な流れと言えます。
  5. 計測手法上のブレ(ボットトラフィックの急増)
    アナリストからも指摘されていますが、StatCounterのようなWebアクセスベースの統計では、Linux上で稼働する自動化スクリプトやWebボットのトラフィックが急増し、結果的に数値を押し上げている可能性も否めません。

つまり、私の結論は次の通りです。


一般ユーザーは Linux に移っていない

一般ユーザーがLinuxに移動した結果がシェアの上昇なのか? 答えはノーでしょう。なぜなら、大多数の一般ユーザーは「OSそのもの」にこだわっていないからです。

  • ブラウザが動けばいい
  • SNS、動画視聴、ネットショッピングができればいい
  • PCの内部構造には強い関心がない

この層にとって、あえて自前でLinuxをインストールする理由はありません。Windows10世代PCの延命需要は止むにやまれずであってこれからも続くとは考えにくい。むしろ、この「OSは何でもいい層」の受け皿になっているのはChromebookだと思われます。

Chromebookに搭載されているChromeOSも、技術的な正体はLinuxカーネルベースです。つまり、一般層は「Ubuntuのような純粋なデスクトップLinux」に自ら移行するのではなく、知らず知らずのうちにLinuxカーネル上で動くブラウザ特化型端末を選んでいる、というのが実態です。米国では特に教育市場において、すでに60%以上がChromebookに置き換わっています。ただし、ChromebookユーザーはLinuxデスクトップのシェアに含まれません。含まれていたら、もっとLinuxデスクトップのシェアが上昇していたはずです。


Linuxプリインストール機が一般向けに出ない理由

Linuxシェアが今後も右肩上がりを続けるには、「Linuxプリインストール機が一般向けに広く販売されること」が不可欠です。しかし、ここは構造的にかなり難しい壁があります。

Dell(XPS Developer Edition)やLenovo(ThinkPadの一部)など、開発者や法人向けのハイエンドなLinux搭載機は存在します。しかし、家電量販店などの一般コンシューマー向け店頭市場には絶対に出てきません。

なぜなら、Microsoftがずっと以前からOEM(PCメーカー)に対して強力な支援を提供しているからです。

  • OEM Incentive Program
  • Market Development Agreement(市場開発協定)
  • Co-opマーケティング資金(共同広告費)
  • ボリュームディスカウント
  • 販売実績に応じたリベート(還元)

つまり、「Windowsを搭載した方が、Linuxを搭載するよりPCメーカーは圧倒的に儲かるし売りやすい」という構造が長く続いているのです。

もしメーカーが一般向けにLinuxPCを店頭に出そうとしたら、インセンティブはゼロになり、Windows慣れしていない一般客からのサポートコストが跳ね上がり、周辺機器の互換性クレームが増え、Microsoftからのマーケティング支援も受けられません。

OEMが一般向けLinux PCを出す理由は、ビジネス的に見て全くないのが現状です。


MicrosoftはOS事業を続けるのか?

OEMインセンティブの構造を維持すれば、Windowsはまだまだ売れ続けます。

とはいえ、OSという巨大システムの維持メンテナンスには、私たちが想像するよりも遥かに莫大なコストがかかります。Microsoft内部でも、「Windowsのメンテナンスに人と時間を使うより、Linuxエコシステムに任せてクラウドに集中した方が儲かるのでは?」という議論は実際に行われているはずです。

では、OSとしてのWindowsの未来はどうなるのか? 私の予想はこうです。

短期(これから3、4年) – Windowsは今のまま続く

理由は単純で、まだまだ巨大な利益を生む事業だからです。OEMインセンティブ、Office搭載による収益、Edge/Bingの広告枠、Microsoft 365 への誘導、そして昨今の「Copilot+PC」の販売戦略。どれを取っても、短期的にはWindowsを続ける十分な理由になります。

中期(5年から10年後) – Windowsは「薄いOS」になる

しかし、この重厚長大な構造を続けると、いずれOS単体では利益が出ず、赤字部門化していくでしょう。Microsoftが本当に望んでいる未来は、Windowsのクラウド端末化ではないでしょうか。

ローカルOSは最低限のUIとセキュリティだけを担い、アプリはWeb化され、処理の中心はCopilot(AI)とクラウドに依存する。ChromeOSにかなり近い方向性です。Microsoftアカウント強制やローカルアカウント廃止への動きはそれを示しています。

長期(10年後以降) – OSの重いメンテナンスは縮小し、実質的な主導権が逆転する

クラウドやAIが完全に本業となる時代が来れば、Windowsの後方互換性維持は足枷(負債)になります。 その時、WindowsというOSは極限まで簡素化され、クラウドへの「ランチャー」としての役割に特化していくでしょう。

現在のWindowsにはLinux環境を動かす「WSL(Windows Subsystem for Linux)」がありますが、長期的にはこの立場が逆転するイメージです。つまり、ローカルのWindowsは薄いUI層にすぎず、主要なバックエンド処理や開発基盤はクラウドやコンテナ(Linux)側に完全依存していく状態です。

それでもWindowsという製品自体は残り、Windowsマシンとしての販売は続くでしょう。OEM奨励金も減るかもしれませんが、完全になくなることはありません。彼らがLinuxという名前を前面に出さずWindowsブランドを維持する理由は、圧倒的なブランド力、レガシーな互換性、そして企業市場の巨大さがあるからです。


Linuxシェア10%は「一時的な上昇」だが、底上げはされた

総合的に判断すると、直近のLinuxシェア10%突破というニュースは、以下の要因が重なったことで起きた一時的な上昇だと言えます。

  • Windows 10延命需要(これが最大の波)
  • SteamDeckの普及
  • 中古市場+Linuxの定着
  • 技術者層のネイティブLinux化

Windows 10のサポート終了(2025年10月)から約1年が経過し、延命需要の波は落ち着いたと見るべきです。そのため、このまま15%、20%と急上昇していくことはないでしょう。

しかし、SteamDeckや開発者需要の拡大によってベースラインそのものは確実に底上げされました。一般向けLinuxプリインストール機が増えない現状を考えれば、今後のLinuxシェアは一過性の波が落ち着いた後、「10%前後で定着し、横ばい推移する」というのが現実的な着地点ではないでしょうか。

みなさんはどう考えますか?


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本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、よい Linux & Windowsライフを!

カテゴリ: その他

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